企画・提案力で需要開拓へ
──安定収益の代表格であるアウトソーシングへの取り組みはどうですか。
西田 実は、データセンターで顧客の基幹業務システムを預かるという純粋なアウトソーシングは、売り上げベースで全体の1割ほどしかありません。当社がシステム開発メインで発展してきたことも影響しています。
幸い、今はクラウドコンピューティングの引き合いが増加中です。顧客が自身でクラウドを構築するプライベートクラウドや、当社のコンピュータリソースを活用するエンタープライズクラウドなど、さまざまな方式がありますが、クラウドの基本はデータセンターをベースとしたシステム構築です。クラウドの潮流をうまく活用することで、データセンターを軸としたアウトソーシング型ビジネスの拡大へとつなげます。
ソフト開発でも、顧客の基幹業務にしっかりと食い込み、安定的に発注いただけるビジネスも含めれば、売り上げの5割ほどはストック型のビジネスが占めます。ただ、より安定させるためには、先のアウトソーシングやクラウドビジネスを、向こう4~5年のうちには倍増させる勢いで取り組みます。
──グローバル戦略はどうですか。
西田 顧客企業とともに海外に出て行くのが基本方針です。今はお隣りの中国の上海に現地法人を置き、まずは中国に進出する日系企業向けのビジネスをメインとしています。中国のビジネスパートナーとの業務提携も積極的に進めており、現地日系企業のITシステムの構築・運用やオフショア開発によって、グローバルでのビジネスを伸ばします。
──御社はNTTデータの唯一のコアパートナーであることから、海外進出に積極的なNTTデータとの連携も可能なのではないでしょうか。
西田 もちろん、NTTデータの海外進出を先導できる立場でありたいとは思いますが、まだまだ受け身であることは否めません。昨年11月にNTTデータのビジネスパートナーのなかで初めて、より密接な取引関係を築くコアパートナーに選定されたのですが、これは当社の技術力を高く評価していただいたからなのですね。技術力があるということは、とても誇らしいことなのですが、今後はユーザー企業やビジネスパートナーのビジネスをより積極的に先導できるような提案力、企画力の強化が欠かせない要素となります。
──今後の中長期の成長イメージはどのようなものでしょう。
西田 基本は“自律的成長”です。受け身ではなく、顧客の潜在需要を的確に捉え、自ら企画・提案できる商材を増やします。
クラウドやアウトソーシングなどのストック型ビジネスや海外展開、どれをとっても座して注文を待つのではなく、こちらから仕掛けていくことが、自律的な成長につながる。今期は保守的な業績見通しだと冒頭に申し上げましたが、当社が主体性をもってビジネスに取り組むことで、向こう3年の期間で業績をV字回復させることができると考えています。
長期的な年商目標は1000億円、営業利益率10%、海外売上高比率5~10%をイメージしており、自律的成長の基礎さえしっかり押さえれば十分に達成可能なものだと確信しています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
営業利益率10%近い高水準を保ってきた優良SIerのDTSだったが、今般の経済危機で利益率は半減。売り上げも落ちた。西田公一社長はこれをV字回復させる。得意分野の金融業のIT投資は回復基調だ。この追い風を最大限に生かす。ただ、産業・流通や海外事業の成長エンジンへの転換はまだこれから。「顧客のビジネスパートナーの常に上位3位以内に入れるかどうかがカギ」とみる。
基幹系システムのクラウド化一つをとっても、「トップクラスのビジネスパートナーにならないと受注は難しい」。DTSならではの「企画・提案型の商材の拡充を進める」ことがパートナーランクの向上につながる。技術力は、同社がSIer最大手のNTTデータの唯一のコアパートナーであることが証明している。今後は、ユーザー顧客のニーズを迅速に掴んで「自律的にビジネスを伸ばす。受け身ではダメだ」と、成長への強い意欲を示す。(寶)
プロフィール
西田 公一
(にしだ こういち)1956年、愛媛県生まれ。78年、愛媛大学工学部卒業。同年、日本電信電話公社(現NTT)入社。95年、NTTデータ通信(現NTTデータ)金融システム事業本部担当部長。98年、金融システム事業本部部長。01年、金融システム事業本部企画部長。03年、金融システム事業本部副事業本部長。05年、執行役員リージョナルバンキングシステム事業本部長。09年6月、DTS取締役副社長執行役員。10年4月1日、代表取締役社長に就任。
会社紹介
DTSの今年2月時点の業績予測をみると、2010年3月期の連結売上高は前年度比13.7%減の518億円、営業利益は同56.9%減の15億円。2期連続の減収減益となり、厳しい業績だった模様。ただし、需要拡大が期待できる金融系システムに強いことなどから、業績は昨年度で底を打ったと同社ではみている。今期(11年3月期)からのV字回復を目指す。