NECは2010年2月に中期経営計画「V2012」を発表した。10年度(2011年3月期)はその初年度にあたる。2017年を見据えた目標を達成するため、グローバルに大きく舵を切ったファーストステップの年でもある。遠藤信博社長は10年4月1日付で就任し、同社が飛躍するうえで重要な舵取りを任された。「2011年は、グローバルで業績をあげる」と遠藤社長。これから3年間で1兆円の売上高を世界で稼ぎ全体の業績アップを図るスキームを、常に頭に描いている。
5極体制で「面」のビジネスを構築
──年が明けて第3四半期が経過しました。2010年度(2011年3月期)から始まった中期経営計画では、強化ポイントとして三本柱でビジネスを推進しています。10年度は前年度に比べれば業績が改善していますが、まだまだこれからというところですね。
遠藤 当社は、「NECグループビジョン2017」で提唱した「人と地球にやさしい情報社会をイノベーションで実現するグローバルリーディングカンパニー」を目指しています。“C&C宣言”40周年にあたる2017年には海外売上比率を50%にするという高い目標を打ち立てました。10年2月に発表した中期経営計画「V2012」は、17年度で達成すべき目標に向かってのファーストステップになります。
中計では、ご指摘いただいた通り「5極体制を中心としたグローバル事業の拡大」「IT/ネットワークの融合領域であるクラウド関連事業の拡大」「自動車電池、パーソナル新端末などの新事業領域の拡大」を事業の三本柱として掲げています。「人と地球にやさしい情報社会を──」を目指すうえで、われわれがどのようにグローバルに貢献できるかと考えたとき、鍵となるのが「C&C(情報処理技術と通信技術の融合)」です。そのなかで、最も成長を期待しているのが「クラウド」。また、エネルギーを中心とした新領域である「エコ」にも重点を置いています。
グローバルでは北米、中南米、中華圏、APAC(アジアパシフィック)、EMEA(欧州、中近東、アフリカ)の5極のうち、中南米を除く4極までを整備。11年4月には、5極目となる中南米に地域統括会社を設置します。
──5極体制で実現するのは営業、販売、それとも生産の強化でしょうか。
遠藤 まずは市場の開拓です。「C&Cクラウド」を実現するなかで、顧客に合わせてカスタマイズを行って、いかに顧客に満足してもらえるソリューションを作りだせるかというところが重要。地域別の体制を整備したのは、ニーズは地域文化に根ざしているところが多く、地域でお客様の要望を聞いて、しっかりとニーズをつかんで、そこからソリューションを作ることがポイントなんです。
──5極体制と、そこで展開されるソリューションの進捗状況を教えてください。
遠藤 一つは、「AFIS」という指紋認証システムをベースとした社会インフラソリューションを、シンガポール、南アフリカなどで展開しています。10年5月には、IT/NWソリューション提供体制を強化するために「NECヨーロッパクラウドコンピテンスセンター」も稼働させました。09年7月に受注した、スペインと中南米で最大の通信キャリアであるテレフォニカの中小企業向けのSaaSプロジェクトを中心にビジネスを始めています。
地域内でノウハウを蓄積し、横展開していきます。それが5極で整備してきた地域統括会社であり、各地に置いた「コンピテンスセンター」の役割です。「点」と「線」をつなぐのではなく、「面」でビジネスを展開する。その基本コンセプトが少しずつできつつあります。
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