NTTデータは、海外売上高1500億円の達成にめどをつけた。北米の有力SIerを傘下に収めたことで2011年度(12年3月期)には、海外売上高を10年3月期実績の約2倍に増やす。国内情報サービス市場もリーマン・ショック以来、3年ぶりにプラスに転じる期待が高まっており、国内外で攻めの経営を実践する。世界中を飛び回り、陣頭指揮を執る山下徹社長に話を聞いた。
国内市場の回復に大きな期待
──米国の有力SIer、Keane(キーン)の子会社化が2010年12月末までに完了しました。NTTデータの世界進出にとって、大きなプラスになりそうですね。
山下 北米でのビジネス基盤の強化は、グローバル展開の要となる部分です。キーンは年商650億円余りで、これに2010年7月にグループ化した年商約110億円の米Intelligroup(インテリグループ)などを加えることで、北米地区でのビジネス規模の目下の目標である1000億円規模にかなり近づく見通しです。
ここ1年余りの間に実施してきたM&Aや、海外での既存ビジネスの成長を足し合わせると、2011年度(12年3月期)の欧米・アジアなど海外売上高の合計値は1500億円規模に達するとみています。10年3月期の海外売上高が約700億円でしたので、ざっくり2倍に増える見込みです。
13年3月期の海外売上高の目標値は3000億円に設定しているので、これからさらに倍増させなきゃならないですけれどね。
──国内SIerのなかで、御社の海外ビジネスへの傾注ぶりは突出しています。どこへ向かおうとしているのですか。
山下 単純明快、企業として成長するためです。残念ながら、国内だけでは成長の道筋がみえてこない。当社の顧客企業がリスクを負って海外の成長市場へ出て行っているのに、当社が外へ出ないというのでは、顧客から見放されてしまいます。自動車や電機など、もともとグローバルビジネスを得意としている業種のみならず、サービス業や食品業など、国内型と思われていた業種の海外進出も活発化しています。もはや、一刻の猶予もない。
ポイントは、グローバルデリバリーモデルを早期に確立することです。世界中、どこへ行っても当社のITサービスを、国内と同じように活用できるようにします。直近では、欧州と北米、中国・ASEANの世界三極体制で基盤整備を進めていますが、まだ全世界とはいきません。NTTの持ち株会社が南アフリカに本拠を置くNIerのDimension Data(ディメンション・データ)をグループ化していますので、ここと連携していくことも視野に入れています。
──2011年は、国内でも明るさがみえ始めているのではないですか。
山下 回復傾向の要因は二つあると思います。一つは、顧客企業が属する業界の再編統合が活発化している点。もう一つは、基幹業務システムの更改時期に差しかかっていることです。
国内市場の成熟や少子高齢化、これに伴う産業構造の変化に合わせるように、金融や製造などさまざまな業界で統廃合が進んでいる。合併で企業の組織が変わる際には、ITシステムの大幅な改修が必要になりますので、ここには大きなビジネスチャンスが生まれます。また、ITバブル崩壊やら、リーマン・ショックやらで延び延びになってきた基幹業務システムの刷新需要も重なってきますので、2011年は国内情報サービス業界は3年ぶりのプラス成長になると期待しています。
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