協業や連携で可能性を追求
──御社が独自に開発してこられたオンデマンド型ERPサービス「FineCrew NX」の状況はどうでしょうか。一時期に比べて販売本数が伸び悩んでいる印象を受けます。
尾嶋 顧客の数でみると、2009年が31社だったのに対し、2010年は33社と2社しか増えていませんが、実はこの2件は、とても大きな案件なのです。大型案件にかかりきりになってしまい、新規顧客を増やしていくことが十分にできなかった点は真摯に受けとめています。
「FineCrew NX」はソフトウェアモジュール(部品)を組み合わせて、顧客の思い通りのシステムを素早く実現することをコンセプトにしています。モジュールの数が多ければ多いほど、より自由度の高い組み合わせが可能になる。09年は88モジュールだったのが、10年には100モジュールを超えており、開発が急ピッチで進んでいることを裏付けています。
「所有から利用へ」の流れのなかで、基幹業務システムでもクラウドコンピューティングを適用する事例が増加しています。「FineCrew NX」は、2011年中にはクラウド環境でサービスを提供できるよう準備しており、アーキテクチャの変化に適応していきます。
──クラウドサービスへの取り組みは、今後、さらに積極化する方針ですか。
尾嶋 そうです。従来のITシステムは、どうしてもトラフィックや処理負荷のピーク時に合わせた設計にせざる得ませんでしたから、平常時に使わないITリソースが発生してしまいます。クラウド化すれば、必要なときに必要なだけリソースを調達すればよくなります。この違いは大きい。
グループウェアやCRM、電子メールなど情報系システムのクラウド化を推進するとともに、IBMソリューションプロバイダである当社が得意とするIBM Power Systemsや旧iシリーズ、旧AS/400などのアウトソーシングサービスも11年中には始める予定です。また、NTTコミュニケーションズのクラウド基盤「BizCITY(ビズシティ)」を活用したサービス開発にも力を入れています。NTTコミュニケーションズは、兼松エレクトロニクスや日本IBMと並ぶ当社の主要株主で、かつ密接な協業関係にあります。
──御社はIT事業をともにする、すぐれた株主に恵まれています。相乗効果をこれまでに以上に高めていくことが事業拡大につながるのではありませんか。
尾嶋 日本IBMは電力などの省エネルギーに効果が高いスマートシティで強みを発揮していますし、兼松エレクトロニクスは付加価値の高いテクノロジー製品、NTTコミュニケーションズは通信インフラを生かしたクラウド基盤をもっています。
スマートシティは、少なくとも都市単位のプロジェクトになりますので、当社だけでは少々荷が重い。例えば、日本IBMや兼松グループなどと組んでいくことで、不可能が可能になる局面が増えていくと思います。当社はソフト・サービスに強みを発揮していく。協業企業がそれぞれの得意分野を生かしていけば、ビジネスのチャンスが大きく広がっていくことは間違いありません。
・こだわりの鞄尾嶋直哉社長は、アメリカのブランド「TUMI(トゥミ)」の鞄を愛用している。「日本IBMに勤務していたとき、同僚の間で流行っていた」ことがTUMIを最初に知ったきっかけだった。以来、10年ほどこのブランドの鞄を使っている。写真の鞄は奥様と二人で選んだもの。
眼光紙背 ~取材を終えて~
「コンピテンシーの強化が、業績に効いてくる」と、尾嶋直哉社長は考える。コンピテンシーとは、成果を上げる行動特性だ。「当社の社員は日頃から勉強熱心で、社内の資格制度などもよく活用している。なかには会計士の勉強や大学院に通っている人もいるほど」。
こうした勉学にすぐれた人材の力を十分に引き出すには、「顧客への提案活動や、自律的な行動力を高める取り組みが有効」とみる。加えて「チームワークを発揮していくことが、より大きなビジネスチャンスを掴むことにつながる」と、社員を激励する。
東日本は大きな震災に見舞われ、この夏には電力不足も懸念される。経済への打撃の深刻さは予断を許さない。所有から利用へとITアーキテクチャも大きく変わる。NOSは、新しい経営トップの指揮の下、顧客のビジネスを成功に導くITシステムを徹底的に追求。自らの商材やビジネスモデルの変化適応を急ぐ。(寶)
プロフィール
尾嶋 直哉
(おじま なおや)1953年、埼玉県生まれ。77年、早稲田大学理工学部卒業。78年、日本IBM入社。94年、ゼネラル・ビジネス首都圏営業推進部長。01年、ソリューション営業本部長。05年、日本オフィス・システム(NOS)入社。理事サービス副統括。06年、取締役常務執行役員ソリューション統括担当。07年、取締役常務執行役員サービス統括担当。11年1月1日、代表取締役社長就任
会社紹介
日本オフィス・システム(NOS)の2010年12月期の売上高(非連結)は前年度比3.1%増の103億円、営業利益は22.0%減の1億8900万円。2011年12月期の売上高は同2.4%減の101億円、営業利益は73.7%増の3億3000万円を見込む。日本IBMのソリューションプロバイダとして業績を伸ばしてきた。自社オリジナルのオンデマンド型ERPサービス「FineCrew NX」をはじめ、サービス事業の強化を率先して進めている。