広東華智科技は、日系有力SIerとの提携戦略に弾みをつける。JBCCホールディングスや日立情報システムズと相次いで提携し、さらには大手日系コンピュータメーカーや金融業に強いSIerとの関係強化を進める。日系SIerが得意とするきめ細かなサービス体系や品質の高さを活用し、年率30%超えで急成長を続ける中国地場の情報サービス市場への進出拡大を狙ったものだ。日系SIerの協業モデルの一つとして、日中双方の情報サービス業界の注目を集める広東華智科技の梅傲寒総裁に戦略をうかがった。
「急成長の歪み」をサービスで補う
――日系有力SIerと相次いで協業して、業績を伸ばしておられますね。
梅 私自身、日本の大学院で学んだ経緯があって、会社の創業時から日本のSIerからソフトウェアの受託開発を請け負っていたのです。そのつながりで、日系SIerやITベンダーとは密接な関係があります。2010年はJBCCホールディングス(JBグループ)、2011年6月には日立情報システムズとビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)の合弁会社を、私たちの地元である中国広州市に設立しました。ほかにも日系のコンピュータメーカーや大手SIerと協業を進めています。
――中国の情報サービス市場は、すでに日本を追い抜き、年率30%超の驚異的な成長を続けています。つまり、日系SIerは、高度成長期にある中国市場への進出拡大のために御社と組んでいると。
梅 そうです。成長余地が大きい中国への進出拡大を狙う日系SIerと、中国でのライバルとの競争で優位性を発揮したいという当社の思いが合致した結果です。日系SIerは、グローバル進出の経験こそまだ少ないものの、欧米ITベンダーに劣らない技術とノウハウをもっています。この知見をうまく取り入れれば、当社の中国市場における競争力は格段に高まりますし、日系SIerもビジネス拡大につながって、共通の利益を得ることができる。
例えば、日本IBMのトップソリューションプロバイダのJBグループは、IBMソリューションに精通する強みをもっており、日立情報システムズはシステム運用サービスやBPOに強い。そのほかにも製造業顧客を多く抱えていたり、金融に狙いを定めているなど、日系SIerの得意領域を中国で存分に引き出すような協力関係の構築を心がけています。
――有力なITベンダーが数多く存在し、市場が急成長している中国で、日系SIerが激烈な競争に打ち勝ってシェアを伸ばせる余地がどれほどあるのでしょうか。
梅 ご指摘の通り、中国のトップクラスのSIerは、すでに世界で十分に通用する技術力やノウハウをもつ企業が増えています。ですが、年率30%超で成長する中国の情報サービス市場ゆえの歪みのようなものがあるのも事実。巨大なデータセンター(DC)をつくったり、サーバーなどの箱モノや、パッケージソフトを導入することも大切ですが、その後の運用や使い勝手に関するきめ細かなサポート・サービスまで、顧客の要望どおり行き渡っているかといえば、中国の情報サービス業界はまだまだの面があるのです。
――もう少し具体的にお話しいただけますか。
梅 端的な例が、時代の潮流となっているクラウドサービスの中核的施設、DCではないでしょうか。中国のDCは、まだまだ本当にレベルが低いところが多くて、設備的にはしっかりしていても、運用サービスやきめ細かなサポートという面では、日本のDCサービスから10年は遅れています。ハード製造やソフト開発の力はめきめき伸びているのですが、サービスにまでは手が回り切れていないところが多々あります。したがって、ここが日系SIerにとっての大きなビジネスチャンスになるとみています。
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