新事業で変化の先取り
――今年は3か年計画の初年度にあたりますね。
成岡 そうです。3か年の中期経営計画「Challenge3」では、三つのことに挑戦します。「事業規模の拡大」「競争力の強化」「増配の実施」です。「事業規模の拡大」については、売上高は35%増の120億円、経常利益は2倍弱の6億円を目標としています。計画通り推移しているので、目標は達成できると踏んでいます。
システム開発とサービス事業は並行して注力していきます。システム開発はボリュームが次第に小さくなってきていますが、当社の事業ベースとしては必要な要素です。そこにDC事業という新しいものを付加することで、ある程度数字を伸ばすことができるでしょう。
最終年度は、当社が東証二部に上場してちょうど50年の節目を迎えます。そのときに増配したいですね。
――今後注力する分野は?
成岡 会社にとっては、次の一手が問題になります。新しく企画推進の部署を設けて、CMS(コンテンツマネジメントシステム)の仕事、国際物流、国際会計を展開しようと動きはじめています。
国際物流は結構いろいろな顧客からお話がきていまして、これに関しては、鈴与グループのもう一つの情報子会社である鈴与システムテクノロジーと一緒に手がけています。私どもがもっているパッケージがあるので、それをクラウドに載せて、11月頃をめどにSaaS提供を開始しようと動いています。
また、インドのフォーソフトと提携し、統合物流管理アプリケーションを展開しています。受発注の分野で倉庫の在庫管理、陸・海・空の輸配送を全部管理できて、その状況をウェブで見ることができる。非常にレベルの高い製品です。米国、ヨーロッパでは200社くらいの納入実績をもっています。
国際会計の製品も販売します。海外に進出するときに、企業が一番悩むのは、国によって会計処理の方法が違うことです。日本の会社であれば、日本円で処理します。そのときに税法の問題や、売上高などの数字がなかなか上がってこないなどの課題があります。そこで、東洋ビジネスエンジニアリングの製品で、多言語、多通貨、多基準に対応したグローバル対応のERP「A.S.I.A.」の販売代理店になりました。鈴与も海外拠点をもっているので、鈴与本体の国際室のメンバーの意見を参考にして販売計画を練っています。
さらに、以前から人事給与アウトソーシングの事業を展開していますが、これに本腰を入れます。人事給与アウトソーシングを拡大することによってBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の仕事を増やそうと、企画推進室で模索しています。
いくつか新しい事業展開について述べましたが、これくらい並べればどれかは当たるだろうと思っています(笑)。そのための研究開発にかなり力を入れます。来年には、花は咲かないまでも、蕾にはなりそうです。
――研究開発には今後も力を入れる、と。
成岡 変化、変革に対応するために、先取りすることに力を入れています。鈴与が200年以上続いている理由は「変化への対応力」です。そのDNAを引き継ぎ、リスクがあっても変化にはずっと対応していくという覚悟で進めています。
・こだわりの鞄 60歳の誕生日に、夫人に買ってもらった鞄である。デザインがシンプルで、落ち着いた色合いが気に入っているとか。一緒に買いに行くときは、夫人が「あなたにはこれが合う」と決めてくれる。成岡社長は「あ、そう」と従うだけらしい。
眼光紙背 ~取材を終えて~
鈴与は時代の変化に合わせて、さまざまな事業を展開してきた。グループ全体には「共生(ともいき)」という共通理念がある。これは「社会との共生」「お客様・取引先との共生」「社員同士の共生」といった、いろいろな意味が込められている。
成岡謹之輔社長は、鈴与シンワートを「夢のある会社にしたい」という。社員は、社会の役に立ち、自身の成長にもつながり、また生活ができるということを実感できれば、仕事にやり甲斐を感じるはずだ。「共生という経営理念と、それに基づく経営方針がある。お客様に信頼されて選ばれる会社になろうというのが大きな方針」と話す。そうなるために、元気に挨拶して報・連・相を徹底し、約束を守る。この行動指針の7~8割を実現できれば、とてもいい会社になると社員に話しており、根づかせることで夢のある会社を実現できると信じている。「新人と管理職は大丈夫だが、中堅社員は続かないので、何度も繰り返して話している」と苦笑いする。(環)
プロフィール
成岡 謹之輔
(なるおか きんのすけ)1967年3月に慶應義塾大学卒業後、静岡銀行入行。97年1月、鈴与商事入社。取締役情報通信事業部長に就任。同年11月に静岡システムテクノロジー(現鈴与システムテクノロジー)代表取締役社長。02年6月、鈴与シンワート取締役。05年11月、静陵コンピュータ(現鈴与システムテクノロジー)代表取締役社長。08年11月、鈴与理事就任。09年6月から現職。
会社紹介
1947年5月、セメント荷扱会社「新和運輸」として設立。94年鈴与シンワートに社名変更。98年、システム開発会社であるフロイスの全株式を取得。同年システムナレッジを吸収合併し、情報サービス事業に進出。99年、フロイスを吸収合併して関西地区に進出。物流と情報システムを二本柱として事業展開し、売上高は89億200万円(2011年3月期)。