厳しい経営環境のなかで、事業改革を断行してきたシネックスインフォテック。米シネックスの傘下に入ってから1年の間に、急速に変貌を遂げた。日本HP出身の松本芳武氏が新社長に就任し、改革は“第二段階”に入った。企業向け事業に本腰を入れることで、さらなる成長を期す。
HP時代の経験を生かす
――メーカー出身で、大手ディストリビュータの社長就任は初めてのケースです。しかも、シネックスインフォテックは外資系企業の傘下にあります。社長就任に至るまでには、どのような経緯があったのですか。
松本 米国でシネックスが取り扱っている製品の3分の1くらいをヒューレット・パッカード(HP)製品で占めています。日本でビジネスを展開していくにあたって、経営陣の強化のためにまず最初に思いついたのが、HPとの協力関係を深められないか、ということだったのだと思います。
私自身、迷いがなかったかと問われれば、当然ながら迷いがありました。決め手は、米国のCEOと面談して、非常に信頼できる方だと思ったことです。CEOやCOOをはじめとする5、6人のメンバーと会って、シネックスのことを知るにしたがって、よい会社だという思いを強くしました。
理由はいくつかありますが、一つは社員の定着率が非常に高く、シネックスで長くマネジメントに従事してきたメンバーが多いこと。もう一つは、日本にかなりの部分を任せてくれることをコミットしてくれたからです。しかも、米国での知見を日本でも生かせるようにサポートすることを、きちんと話してくれました。前職の経験を生かせるとも感じました。
――定着率が高いということは、生え抜きの社員が多いのですか。
松本 多いですよ。例えば、北米でセールスのトップをしているシニアバイスプレジデントは80年代から活躍しています。彼は入社した当時、お客様から電話を受けて見積もりをするインサイドセールスから始めました。一般社員から昇進してきたトップマネジメント層が厚いことに非常に強い印象を受けました。
――社長に就任されたことについて、米国の投資家や販売店、ベンダーはどのような反応を示しましたか。
松本 米国の投資家は、シネックスが成長するにあたって新たな市場を開拓していくという意味で、日本市場への事業展開を好意的に受け止めています。私のことをどれだけ認めてもらっているかは、これから先のことなので何ともいえません。
日本の販売店、ベンダーに対しては、8月に着任して以来、私自身のことを認知してもらうことを最優先してきました。前職でつき合いのなかったようなベンダーを含めて、ほとんどの会社にご挨拶にうかがいました。その際に、期待と懸念が入り交じるいろんなご意見をいただきました。
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