アジアで業界標準目指す
――「業界標準ビジネスプラットフォーム」が成長へのキーワードになりそうです。
嶋本 共同利用型のビジネスプラットフォームは、複数のユーザーでシェアするかたちですので、個別でつくるよりも割安になります。このプラットフォームで「STAR-IV」のように業界標準までもっていけば、収益力をより一段と高めることができます。ただ、システム開発は、原則としてベンダーによる先行投資になりますので、投資体力が求められる。「STAR-IV」では野村證券向けの個別開発で代金をいただく分はありますが、当社が「STAR-IV」の機能増強で先行投資する分も今期70億円ほどになる見通しです。
ほかにも、インターネットバンキング共同運用サービス「Value Direct」、投資信託の窓販業務「BESTWAY/JJ」など業界標準を狙える有力商材を強化するとともに、産業・流通サービス業向けでも金融業向けと同様に業界標準ビジネスプラットフォーム戦略を展開します。これら共同利用やアウトソーシングといったビジネスプラットフォームを支えるDCについても、総額およそ170億円を投じて2012年後半、東京・多摩市に5か所目のDCを竣工する予定です。
――グローバル市場に向けてもビジネスプラットフォームを展開しますか。
嶋本 国内仕様のプラットフォームを単純に横展開するのは難しいとみています。国ごとに規制が異なる現状を考えれば、地場有力企業に向けての展開は、越えなければならないハードルがまだ依然として高い。海外進出する日系企業向けのサービスなら一部応用がきくかもしれません。しかし、当社はアジアにもう一つのNRIをつくることを目標に掲げていますので、最終的には各国それぞれの業界で標準ビジネスプラットフォームの提供ベンダーとしてのポジション獲得を狙っていく構えです。
――2011年11月にはインドでの営業を本格的に始めるなど、アジアでの事業拡大も進んでいます。
嶋本 インドでは、まずコンサルティング事業を立ち上げます。中国ではすでにコンサル事業が軌道に乗り、グループ全体の同事業の売り上げを押し上げるまでのボリュームになっていますが、システム部門のビジネスプラットフォーム戦略を軌道に乗せるまでには至っていません。コンサルから情報サービスビジネスへとつなげていくという意味では、他社に比べて優位なポジションにはあるものの、圧倒的なアドバンテージかといえば、まだそうではない。
中国では、20年近くかけてほぼ独力で事業拡大に努めてきましたが、今後、国内はもちろん、中国・ASEAN、インドを中心とするアジア成長国でビジネスを伸ばしていくためにも、より積極的な提携戦略に打って出ることも視野に入れています。
・お気に入りのビジネスツール 「グリーンITではないが、昔から癒やし効果があるとされる緑色が好みだった」という嶋本正社長は、緑色のビジネスツールを愛用している。「手帳や名刺入れなどで緑色のものがあると、つい買ってしまう」と、癒やし(I)のツール(T)である緑=ITが好きなのだとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
連結売上高を年率7%の割合で伸ばし、営業利益率13%を安定して確保する──。野村総合研究所(NRI)が経営計画「ビジョン2015」で掲げる“あるべき姿”である。2012年は達成に向けての踏ん張りどころ。「業界標準ビジネスプラットフォーム」は、成長戦略の重要な柱だ。嶋本正社長は「ユーザーにとって、どの業務が共同利用型に適し、どの部分でITを戦略的に使うべきかを、ともに考える」として、顧客とともにビジネスを組み立てる。
これまで自力でサービス開発をすることが多かったNRIだが、インド法人設立時には地場有力調査会社と資本業務提携を行い、2011年12月には味の素システムテクノへの出資を視野に入れた業務提携の検討をスタートしている。「他社にはないサービスをより多く創り出していく」と提携戦略を展開しつつも、NRIらしいビジネスモデルを構築することで高度成長につなげる。(寶)
プロフィール
嶋本 正
嶋本 正(しまもと ただし)
1954年、和歌山県生まれ。76年、京都大学工学部卒業。同年、野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)入社。01年、取締役情報技術本部長兼システム技術一部長。02年、執行役員情報技術本部長。04年、常務執行役員情報技術本部長。08年、専務執行役員事業部門統括。08年、代表取締役兼専務執行役員事業部門統括。10年4月1日、代表取締役社長。