国内ビデオ会議システム市場のトップシェア(およそ40%)を握るポリコムジャパン。昨年11月に社長に就任した長谷川恵氏は、「ビデオ会議システムは、現状のIT業界では考えられない伸び率を記録している」と自信満々だ。通信のグローバル企業のトップからポリコムジャパンの社長に転じたのは、ビデオ会議の普及が「やっとリアルなものになってきて、大きな商機がみえてきたから」という。ビデオ会議需要が本格化するなかで、医療や文教という新しい市場の開拓に奔走する。
年内をめどにコンソーシアムを設立
──ビデオ会議に代表される「ユニファイドコミュニケーション(UC)」という言葉が使われるようになって、およそ10年がたちました。しかし日本では、UCの普及がなかなか進んでいない印象を受けます。
長谷川 ビデオ会議システムは、ここ数年で活気づき、まだまだこれからのマーケットだとみています。横ばいで推移している今のIT業界では考えられないほど急速な伸び率を記録している市場です。
日本のユーザー企業は、これまでビデオ会議をコミュニケーションの改善ツールとして捉えてきました。「ツール」ですから、導入の優先度はそれほど高くありません。しかし、東日本大震災によって、今、BCP(事業継続計画)に対する認識が大きく高まっています。これをきっかけに、多くのユーザー企業は、ビデオ会議を事業継続に欠かせない「基幹システム」と捉えるようになりました。
当社は、毎週のようにユーザー企業の経営者を会議室にお招きして、ビデオ会議システムのデモンストレーションを行っています。こうした提案活動を通じて実感するのは、今、ユーザー企業の間ではビデオ会議導入のプライオリティが高くなっており、ミッションクリティカルなシステムに近づきつつあるということです。ビデオ会議は、いよいよ現実的な選択肢になってきているのです。
──ポリコムは、昨年秋、ハードウェアに依存しないオープンなビデオ会議のプラットフォーム戦略を発表しました。長谷川社長は、この戦略を踏まえて、医療や製造、文教といった新市場を開拓するのがミッションだと言っておられます。
長谷川 オープンスタンダードはポリコムの大きな強みです。これによって、当社のビデオ会議システムが、例えばマイクロソフトのUCプラットフォームである「Lync」とネイティブでつながります。このほか、ヒューレット・パッカード(HP)やIBMという有力ハードメーカーも、当社にとってビデオ会議普及のための重要なパートナーです。彼らと緊密に連携し、海外進出に際してビデオ会議システムを導入する製造企業や、画面を通じてフィールドトリップを行う教育機関などの市場を開拓したいと考えています。
ポリコムは、オーストラリアの文教市場開拓を目指して、学校やコンテンツプロバイダなどが参加するコンソーシアムを立ち上げました。ここでは、ポリコムがシステムを提供して、メンバーと一緒になってビデオ会議の普及を推し進めています。日本でも年内をめどに、同じようなコンソーシアムの設立を計画しています。まだ直接お話してはいませんが、最終的には文部科学省もメンバーになっていただきたいと考えています。
──御社は昨年11月、ウェブ会議システムを提供するブイキューブと提携して、相互接続の技術開発や販売チャネルの拡充を共同で進めていく体制を築きました。今年も、このような戦略的提携に取り組みますか。
長谷川 詳細はまだ話せませんが、今、これと似たかたちでのパートナーシップづくりを検討しているところです。
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