パソコンで世界第2位のシェアを握っている中国メーカーのレノボ。日本法人のレノボ・ジャパンは、4月1日付でトップの交代を実施した。レノボ・ジャパン本体で新社長の渡辺朱美氏がビジネスの指揮を執るようになり、前社長(現会長)のロードリック・ラピン氏は、2011年7月に設立された合弁会社「レノボ・NECホールディングス」に軸足を置くという体制を築いた。日本IBM出身で、ノートパソコンのブランド「ThinkPad」に強い思い入れをもつ渡辺社長。レノボ・ジャパンのコア事業である大手企業向けビジネスを伸ばしつつ、中堅・中小企業(SMB)とコンシューマ市場の開拓に注力することを方針に掲げている。
成長の勢いを生かして攻めの姿勢を強化
──渡辺社長は、IBMでおよそ26年のキャリアを積み、2004年にレノボが買収した「ThinkPad」事業にも深く関わってこられました。レノボ・ジャパンのトップに就任されて、十数年ぶりに“ThinkPadに戻ってきた”という感じですね。
渡辺 私は1986年から99年まで、日本IBMでThinkPadの開発やブランドマネージャーの仕事を担当してきました。だから、ThinkPadに非常に強い思い入れを抱いています。私が在籍しているレノボ・ジャパンは、今のIBMと違って、「BtoB」(法人向け)の事業だけではなく、すぐに手応えが得られる「BtoC」(個人向け)の事業も展開しているので、ThinkPadに関する長年のノウハウを、広範囲に生かすことができると考えています。
レノボはここ数年、勢いよく成長し続け、グローバルでシェアを第2位にまで伸ばしています。数字が上がったばかりの2011年度(12年3月期)は、世界で、法人・個人事業の両方の売上高をそれぞれ35%以上伸ばすことができました。日本でもレノボ・ジャパンは、同じペースで業績を拡大しています。
レノボ・ジャパンは、金融や製造といった業種の大手企業を中心にして、法人向けビジネスが全売上高の約60%を占めます。法人事業はこのところ、Windows 7の発売による入れ替え需要の発生や、東日本大震災以降の節電ニーズに大きな刺激を受けています。ThinkPadでは、例えば、昼間はバッテリで動かし、夜はAC電源を使うという「ピークシフト」対応を実現しています。この機能を使えば、簡単に節電できますから、ユーザー企業にものすごく受けがいい。
──昨今、スマートフォンやタブレット端末が人気を博し、従来型パソコンの需要が減少しつつあります。渡辺社長は、パソコン市場を取り巻く環境の変化が激しさを増している時期に、レノボ・ジャパンのトップに就任されました。こうした環境の変化を前提として、ミッションを聞かせてください。
渡辺 パソコン市場の変化は、パソコンメーカーにとって新しいビジネスにつながる可能性もあるという意味で、非常におもしろいと考えています。私はそもそも、パソコンの需要が著しく減少していくという見方はしていません。むしろ、新型端末の登場は、パソコンに接続したり、パソコンと併用するあらゆるデバイスが増えるので、パソコン市場を活性化するポテンシャルをもっているとも思えます。レノボ本社は、環境の変化を受けて、従来のパソコンに加え、タブレット端末、スマートフォン、スマートテレビ(CPUを搭載して通信機能などをもつテレビ)の四つの分野で、製品開発を推進しています。タブレットやスマートフォンは、まずは中国で発売し、成功すればグローバルでも展開する、というモデルを採用しています。
レノボ・ジャパンは、日本のパソコン市場でもまだまだ可能性が大きい。私のミッションはといえば、当面はパソコン事業の拡大に注力して、パソコン市場での存在感を高めることです。当社はここ3年間で、メーカーシェアが着実に伸びています。このモメンタム(勢い)を生かして、強いところは守り、弱いところは攻める、という戦略をとるかたちで、ビジネス拡大に挑むことを方針に掲げています。
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