ユーザー企業のライフスタイルを変革
──ユーザー企業が求めていることは何だと考えておられますか。
テンプルトン ユーザー企業が今、求めているのは、生産性の向上です。企業で働く人たちも、今後は24時間のなかで仕事とプライベートの時間を自由に使い分けて、場所や時間、手段などの制約に捉われずに調和の取れたライフスタイルを求めるようになります。そして、そんな環境を実現するには、モバイル端末から無線ネットワークでクラウドサービスにアクセスするという、これまで“例外”と捉えられていたスタイルが主流になります。それらのライフスタイルや環境を実現していくのが当社のビジョンと認識しています。
一方、グローバルではアップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフトなどがクラウドサービスを提供していて、日本ではKDDIやNTTなどのサービスプロバイダも提供しています。このようなベンダーと組んで、しかも当社が中心的な存在になる。こんなポジションを目指しています。
──他社とのアライアンスも重要になってくるということですね。
テンプルトン その通りです。当社だけではユーザー企業によるニーズのすべてに対応することはできませんので、より完璧なソリューションを提供していくためには協業することが大切ですね。現段階でもアライアンスを組んでいるのですが、製品の親和性が高いマイクロソフトをはじめネットワーク機器関連で圧倒的なシェアを誇るシスコシステムズ、HPやデルなどもサーバーやストレージを提供していることを考えれば、重要なアライアンスメーカーといえます。
──競合も増えるとみておられますか。
テンプルトン 現段階で競合しているのは、ヴイエムウェアやF5、WebEX(シスコ)などで、またデータシェアリング分野で複数のベンチャー企業も競合となり得ます。ですが、先ほども申し上げたように、シスコとは協業関係を構築していますので、「ある時は競合し、ある時は共存する」というのが実際のところでしょう。では、なぜ当社が競合するベンダーと共存できるのかといえば、「オンラインコラボレーション」「デスクトップ仮想化」「クラウドネットワーキング」の分野で当社がトップもしくは2位のシェアを築き上げているからです。
──業界で、どのような存在になりたいと考えておられますか。
テンプルトン 「本物」の会社です。当社が絡むことによって、パートナー企業やユーザー企業にメリットをもたらし、しかも三者が収益拡大を実現する。そんな存在になりたいですね。
・お気に入りのビジネスツール Twelve South社のiPhone用ケース「BookBook for iPhone」。小さな洋書のようなブック型で、クレジットカードや名刺なども収納できる。ユニークで機能性が高い点が気に入って、「実は、これは妻にプレゼントしたもの。1日で使うのをやめてしまったので、自分で使うことにした」のだとか。
眼光紙背 ~取材を終えて~
7月17~18日に開催したプライベートイベント「Citrix iForum 2012 Japan」のために来日する際、飛行機が大幅に遅れた。しかも、その影響からか航空会社の手違いで預けていたスーツケースが紛失してしまうという事態が起きた。さらに、スケジュールも大幅に狂ってリハーサルなしで基調講演に臨んだ。取材したのはイベントの初日。トラブル続きにもかかわらず、まるで笑い話のように語ってくれた。
どうも、インタビューを受けるのだから明るく振る舞ったというわけではないようだ。大きなイベントということで、日本法人のスタッフに心配をかけたくないという思いからだろう。「来日すると、いつも現場の営業担当者を含めて全員に声をかけないと気が済まないらしい」と、広報担当者。誰にでも気遣うトップがいるからこそ、会社は伸びる。マーク・テンプルトン氏に会い、米シトリックスが成長している理由を改めて理解した。(郁)
プロフィール
マーク・テンプルトン(MARK B. TEMPLETON)
1952年9月1日生まれ。75年、ノースカロライナ州立大学を卒業。78年、バージニア大学ダーデンビジネススクールでMBAを取得。個人信用情報機関の米エキファックスのディレクターを務めた後、95年、米シトリックスに入社、マーケティング担当バイスプレジデントに就任。98年、社長に就任。01年、CEOを兼任。現在に至る。
会社紹介
1989年に設立。仮想化、クラウドネットワーキング、コラボレーションなどの分野で製品を提供している。BYOD(私的デバイスの持ち込み)などモバイルワークスタイルの分野でも製品ラインアップを拡充している。パートナー企業は100か国で1万社を超える。日本法人の設立は1997年。