中国有力SIer中訊軟件集団のサイノコム・ジャパンは、中国地場市場での存在感を高める方向へ舵を切る。主要顧客である日系SIerの多くは、単なる中国オフショアソフト開発パートナーとしてだけでなく、中国地場市場に進出するビジネスパートナーの役割を担ってほしいとサイノコムに期待している。これを受けて、サイノコムは中国国内でのITサポートや、中国地場の顧客に向けた営業力を強めていく。対日ビジネスが売り上げの多くを占める同社だが、将来的には日本と中国での売り上げ構成比を半々にする構えだ。さらに、今年7月には有力SIerのSJIグループと合流するなど、グループ経営体制の変革も急ピッチで進めている。
SJIグループとの相互補完を強める
──御社は今年7月、有力SIerのSJIグループによる株式公開買い付け(TOB)によって、SJIグループに加わりましたが、その狙いはどこにあるのでしょうか。 時 私は日本事業を担当していますので、中訊軟件集団全体の戦略についてはあまり深く話せません。そういう前提の下に一ついえることは、1995年に創業した当社のビジネスモデルが、今、大きな転換点を迎えているということです。日本の上場SIerであるSJIにとっても同じことがいえます。両グループが同じグループを形成することで、ビジネス環境の変化に適応するだけの体力を強めたい。こんな思いが背景にあります。
──どのような変革期にあるとお考えですか。 時 当社は売り上げの9割余りを日系企業向けソフトウェア開発業務が占めています。私がサイノコム・ジャパンに参画した99年から本格的に、いわゆる対日オフショアソフト開発を拡大させてきました。当時は100人もいない会社でしたが、今ではグループ全体で2000人規模まで拡大。野村総合研究所(NRI)をはじめ、日本の優良SIerなど10社ほどのソフトウェア開発を請け負っています。
ただ、日本国内の情報サービス市場の成熟や、完成度の高いパッケージソフトの普及、クラウドに代表されるサービス化への流れのなかで、昔ながらの手組みのソフト開発の需要が伸び悩んでいる側面があるのも事実。同時に、当社と取引がある日本の大手SIerの多くがグローバル化を推し進めており、アジア最大市場である中国での地場ビジネスの拡大を求めるニーズも高まっています。こうしたなか、受託ソフト開発をメインに手がけてきた当社も、事業構造の転換を求められているというわけです。
──それが、今回のSJIグループ入りということでしょうか。 時 SJIグループと当社グループとの相乗効果、相互補完関係、規模のメリットによる開発人員の稼働率の向上などを狙ってのことですが、ビジネスパートナーである日本のSIerや、あるいは日本のユーザー企業のニーズに応えていくことが本質だと考えています。SIer、ユーザー企業ともに中国市場への進出を加速させているなかで、まずは当社が日本のSIerにとって頼もしいビジネスパートナーになり得ることが大切なのですが、残念ながら、こうした期待に十分応えているとは言い難い。
──中国市場での存在感がまだ弱い、と? 時 対日オフショア開発を手がけている多くの中国SIerにいえることですが、例えば、オフショア開発の場合、中国側のプロジェクトマネージャーが日本のSIerやユーザー企業の情報システム子会社などに出向いて、ブリッジSE的な仕事に従事して、仕様を固めてから中国本国の開発拠点にバトンタッチするという工程が典型的です。このような構図ですと、中国地場の顧客との接点が少なく、中国市場における営業力が決定的に弱くなってしまいます。残念ながら対日ビジネスが多くを占める当社も同様です。
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