有力SIerのシーエーシー(CAC)は、グローバルデリバリーモデルの整備を急ピッチで進める。日欧米で受注活動を展開し、中国やインドでソフトウェアの開発やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)を行うモデルで、欧米主要SIerはほぼこのモデルに沿ってビジネスを行っている。日系SIerは一部大手を除いて、こうしたグローバルITサポートは十分でないケースが多いが、CACは自ら率先して経営リソースの世界最適配分によるグローバルデリバリー体制を強化してきた。加えて強みとする金融や医薬の業種別ノウハウを存分に生かしていくことでビジネスの拡大を図っていく。
世界的視野で経営リソースを最適配分
──グローバルデリバリーモデルの整備を進めておられますが、そもそもこのモデルは、どのようなものなのでしょうか。 酒匂 グローバルデリバリーモデルは、ユーザー企業が海外へ進出した場合にも、それぞれの地域で最適なITサポートを提供できるモデルを指すものです。端的にいえば、人手が必要なソフトウェアの製造工程を中国やインドで行うことでコストを削減して、主眼はあくまでも顧客の経営課題を解決することに経営リソースを集中する手法です。私どもは、ニューヨークとロンドン、上海に営業拠点を置いています。また、中国の蘇州、インドのムンバイに製造やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)の拠点を展開して、世界的視野に立った経営リソースの最適配置に努めています。
──日本のSIerの場合、ユーザーからのコスト削減の要請を受けて、単純に製造コスト削減のためにオフショア開発を活用しているケースが目立つのですが、御社は最初からグローバルデリバリーモデルの構築を目指しているという点で異なりますね。 酒匂 当社は金融や医薬などの業種に強みをもっているのですが、とくに製薬会社などは海外売上高比率が高いところが多く、CIO(情報担当役員)が海外で勤務するケースも増えています。グローバルで最適化した情報システムを構築するためには、ドメスティックなものではなく、グローバルスタンダードに準拠することがコストの削減につながり、効率がよくなるという考えにもとづくものでしょう。
RFP(提案依頼書)を英語で提出してほしいという要望や、情報システムの各国語対応の要求も珍しくなくなりました。ユーザー企業は、当然、海外主要都市でのITサポートを求めているわけで、当社としては、こうしたユーザー企業の要望に応えていくために海外拠点を整備し、製造やBPO拠点の最適配置を進めているわけです。
──JISA(情報サービス産業協会)がこの12月に開催した日印ITビジネスパートナーシップ会議「JISA─NASSCOM ITビジネス・ダイアログ2012」では、御社の執行役員の大須賀正之・JISAグローバルビジネス部会副部会長が議長を務められました。 酒匂 そうですね。大須賀(執行役員)も活躍してくれていますが、インド出身のメヘタ(メヘタ・マルコム執行役員)もずいぶんがんばってくれています。インドでは、地場有力SIerのiGATE(アイゲート)社と提携して一部開発業務を委託するとともに、私どももインド法人を開設してBPO事業を手がけています。単に「中国やインドにオフショア開発拠点をつくりました」というのではなく、日欧米、アジア成長市場に展開するユーザー企業に最適な条件でITサポートをデリバリーできるかどうかが、われわれSIerの海外ビジネスに問われているのだと考えています。
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