サービスを情報系システムの販売につなげる
──これらのサービスを提供するターゲットは、どんな層ですか。 江口 基幹システムの刷新需要が旺盛な年商100億~500億円くらいの中堅企業です。新規だけでなく、既存のお客様にも提案していきます。実は、いまだにIBMの汎用機である「AS/400」を利用している根強いファンがたくさんいて、こうしたお客様は、「AS/400」を使いながら、どうやって新たなシステムを構築するのかということを考えておられるのです。
「AS/400」は、フロントがウェブベースになれば、基幹系や業務系といったところで中堅企業が使うにはまだまだ事足りるパフォーマンスを提供することができます。そして、中堅企業は情報系システムにはあまり強くありません。「AS/400」のオンライン分析処理(OLAP)を使っているお客様もいますが、トランザクションが増えてきていることもあって、データ分析などに対しては、お客様も意欲的です。
こうしたお客様のシステムをDCで預かって、データ分析という切り口で提案していきます。例えば、「AS/400」の区画を切って、片方はiOSで動かして基幹系システムを組んで、ウェブインターフェースやスマートフォンに対応するようにする。もう片方の区画では、LinuxやAIX上に統合解析ソフトウェア「IBM SPSS Statistics」を入れて、情報系と連動するシステムを構築するということを提案しようと思っています。
クラウドデータの分析・活用を提案
──もう一つの注力分野であるクラウドソリューションについて詳しく教えてください。 江口 同じストックビジネスでも、運用サービスは、どちらかというと地味じゃないですか。そのうえ、どの企業もアウトソーシングやホスティングなどのサービスを提供しています。そこで、当社の強みを生かしたクラウドソリューションを提供したいと考えて、2年ほど前に始めました。IT資産管理に始まり、ドキュメント管理、eラーニングと手を広げて、12年7月には日本IBMの「SugarCRM」をベースにしたCRM(顧客関係管理)の提供を開始しました。ルートセールスを行っているような流通業や、小売業の企業を対象として提案しているところです。
──TMIならではのクラウドソリューションの特徴はどんなところですか。 江口 安いことですね。「Salesforce.com」より安くないと意味がありませんから。とくに「Sugar CRM」はオープンなので、安くて、カスタマイズできるというメリットがあります。
──今後もクラウドソリューションのラインアップを拡充していく方針ですか。 江口 まずは、この四つのクラウドソリューションの拡販に専念します。やみくもにクラウドの幅を広げても、それがお客様のニーズに合っているものだとは限りませんから。ですので、ある程度領域を絞って、そこから順次、横展開していきます。
──ストックビジネスとして、売り上げにどのくらい貢献しそうですか。 江口 実は、クラウドの課金で稼ごうとは考えていません。課金ではなくて、お客様が使うクラウドのデータをDCに置いてもらって、「当社の情報系システムを使って分析しませんか」と提案していきたいのです。先ほども少し触れましたが、中堅企業はそれほど情報系システムに精通しているわけではありません。お客様がクラウドを利用していけば、データはどんどん溜まっていきますから、「受注・発注・売上伝票など基礎的なデータだけではなくて、より詳しく分析しませんか」という切り口で情報系システムを提案しやすいのです。
──サービス事業へシフトチェンジするために、組織・体制をどう整えていきますか。 江口 まずは人のスキルですね。そのため、アプリケーション開発に強い企業など、当社と相乗効果を期待できる企業がみつかれば、M&Aも視野に入れます。
サービス事業への転換となると、どうしても人材と投資が必要になってきます。IBMは、およそ30年かけてじっくりとサービス事業に投資してきました。今回、当社でそれを短期間でどこまでやり切れるかが、私のチャレンジとなります。
・FAVORITE TOOL TUMIの鞄。通勤時に使用している。江口社長は鞄をたくさん所有している。以前は通勤用にもう少し幅広のものを使用していたが、電車などで隣の席の人に鞄が触れてしまうことに気を遣って、小さめのものを購入したのだとか。真ん中に雑誌と新聞が入るポケットがあり、革が柔らかいので使い勝手がいいそうだ。
眼光紙背 ~取材を終えて~
機器販売の不振は、多くのIT企業に共通する課題だ。ハードウェアの単価が落ちており、今やそれだけではビジネスが成り立ちにくい。こうした企業にとって、新たなビジネスモデルの構築や組織の改革は必須だ。
ただ、ビジネスモデルの刷新に成功して、機器販売の不振を補うことができたとしても、ハードウェアの販売事業そのものが改善されるとは限らない。そういう意味では、TMIのサービス事業は注目に値する。「トータルマネージドサービス」とクラウドソリューションの両サービスをデータ分析という観点で情報系システムの販売につなげようとしている。つまり、サービス事業が機器販売の不振を補うだけでなく、機器販売の売り上げに貢献する仕組みを構築しようとしているのだ。このビジネスモデルが成功すれば、TMIと同じような状況に置かれている企業にとっては、恰好の参考事例になるのではないだろうか。
「M&Aも視野に入れる」と、本気で会社を変えていく姿勢を示す江口社長。ぜひ実行して成果を上げてほしい。(道)
プロフィール
江口 昌幸
江口 昌幸(えぐち まさゆき)
1952年9月、佐賀県生まれ。早稲田大学理工学部を卒業後、77年4月に日本IBMに入社。SE技術部門に従事し、要職を歴任した。12年7月、トッパン エムアンドアイの社長に就任した。趣味は音楽とゴルフ。とくに音楽には造詣が深く、昔はジャズやボサノバを好んで演奏していた。現在は、観賞が中心だとか。
会社紹介
1994年10月1日に設立。資本金は4億円で、凸版印刷と三谷商事が出資している。従業員数は175人、売上高は非公開。日本IBMのソリューションプロバイダとして、各種サーバーの販売やサービス事業を展開している。2012年には、世界のIBMパートナー企業を表彰する「IBM Beacon Award」で、技術部門の「Outstanding Technical Excellence」を受賞した。