IT産業の調査・分析と、その調査データを活用したユーザー企業向けIT戦略支援サービスに強いアイ・ティ・アール(ITR)。創業者の内山悟志氏は、経営トップを務めながら今もアナリストとして第一線に立つ。内山氏は、今の国内IT産業をどうみて、ユーザーとITベンダーが成長するために必要なことは何だと考えているのか。「海外で勝つことができる力を身につけることが、ユーザーもベンダーも必要。私たちはそのために、半歩先の情報を提供する」と内山氏は語る。およそ30年にわたってIT産業を観察してきた氏のアナリストとしての捉え方などを聞いた。
ユーザー企業に適した調査が必要と考えた
──ITRは設立時から、米国の大手IT調査会社と組んで、そこからの情報を生かした国内IT産業の調査と、ユーザー企業向けのITコンサルティングサービスを手がけておられます。前身から数えれば、来年で設立20年になりますね。 内山 私はもともと企業の情報システム部門でSE(システムエンジニア)を務めていて、その後、IT調査会社に移籍して、アナリスト業務に就きました。もう30年ほど前のことになります。その当時、ほとんどの調査会社は、ITベンダーに提供するためのレポートを作成していました。
情報システム部門にいた頃、「ユーザー企業に提供してくれる調査レポートがあったらいいのに」と思っていましたから、アナリスト業務を数年間こなした後、上司に「ユーザー企業向けの調査事業をさせてほしい」とお願いしました。ですが、残念ながら承認されず……。ほかを見渡しても、私の願望を実現している調査会社がなかったので、「じゃあ、自分でやろう」と。それがITRの始まりです。
──ITRは、設立から現在まで、ほぼ途切れることなく米国の調査会社と業務提携しています。単独で事業を展開しないのは、なぜですか? 内山 世界のなかで、IT産業が最も発展していて先をいっているのは、やはり米国です。先進的なITの技術は米国で誕生し、ユーザー企業のIT投資額は他の国よりも多い。IT産業の将来を予測するためには、米国の情報が絶対に必要ですから、そこと手を組んでいるわけです。
──自社の拠点を海外に設置するという選択肢はありませんか? 内山 立ち上げるスピードと投資リスクを抑えること、その土地の事情を知る術は、そこにいる会社が最も長けているという考えから、協業する道を選んでいます。
──米国の最先端情報を日本にいち早く取り込んで提供することが、ITRの役目ということですか? 内山 いや、そうではありません。米国のIT調査会社が提唱するビジョンは、日本の企業には適さない面があります。日本よりも先を行く米国の考えは、日本の企業にとって三歩先くらいの差があります。三歩先の情報をそのまま伝えても、日本の企業には響かない。ITRは、三歩先の情報を知ったうえで、ユーザー企業のビジネス拡大にすぐに直結するかたちに変換して伝えています。「半歩先」の未来を構想してユーザー企業に「今後のIT戦略はこう描きましょう」と提案する案内人。それがITRの役目です。
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