富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)は、国内の16拠点に構えるデータセンター(DC)を基盤として、システムの企画から開発、運用、保守までのサービスを提供している。2012年6月29日に社長に就任した浜野一典氏は、DCを強化するだけでなく、明確な戦略のもとクラウドサービスやグローバル展開を推進。パートナー企業との協業事業も拡充していき、来年度中にも単体での売上高1000億円を達成する見通しだ。
DCビジネスは堅調だが差異化が必要
──データセンター(DC)は、御社のビジネスの基盤となっていますが、国内のDCビジネスの市況感をどうとらえておられますか。 浜野 DCの市場は堅調に伸びていて、新規のお客様は順調に増えています。ただ、残念ながら売り上げはお客様の数ほどには伸びていません。いくつかの理由がありますが、一つはメインフレームからサーバーへと、高性能で小型の機器に移行が進んでいることです。その結果、顧客あたりのラック数、サーバー数が減って、単価が下がっています。二つ目が、DC事業者間の競争が激しくなっていることです。DCを新設する事業者が増えて、少し供給過多になりかけている状況に加えて、設備面で他社と差をつけることが難しくなっていることが背景にあります。こうしたことから、トータルでみると、市場の伸びはなだらかになっています。
──東日本大震災以降、ユーザーの反応は変わってきましたか。 浜野 近年は、BCP(事業継続計画)やDR(災害復旧)に対するお客様の関心が非常に高まっています。また、DCを活用したクラウドサービスを新しく利用されるお客様も増えています。そういう意味では、当社が凸版印刷と協業して提供しているギフトカードの残高管理をリアルタイムで行うプロセッシングサービス「ギフトカードASPサービス」は、もっと売れるのではないかと期待しているところです。また、当社のDCを活用して、システムを国内に集約して、海外でサービス展開していきたいという要望も増えています。
──御社のDCのなかでも、とくに主力となるのが横浜と大阪のDCですね。DCが増えて価格競争が始まっているなかで拡張計画を発表しておられますが、採算のめどは立っているのですか。 浜野 2010年12月にオープンした横浜DCは、2100ラックを抱えていますが、すでに全体の3分の2が埋まっています。現在、同等の規模の新棟の建設に向けて、設計を進めているところです。今年末くらいに竣工して、実際に建物ができあがるのはほぼ2年後の予定です。単月では、すでに損益分岐点に達して堅調に伸びています。来年の新棟設立に向けて、1年以内には累積でも損益分岐点を越えるようにしたいと思っています。
大阪のDCも、同様に2倍の増強を進めています。こちらは、4月にはオープンする予定です。
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