需要の落ち込みが激しいパソコン市場で成長し続ける──。6月28日付で、レノボとNECの合弁会社であるLenovo NEC Holdings B.V.の社長に就任し、さらに100%子会社であるレノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの社長も務めるようになったロードリック・ラピン氏は、タブレットを柱とする「PC+(ピーシープラス)」の市場開拓に勝負をかける。トリプル(3社)の会社を率いることになったラピン社長に、経営体制一新の狙いや今後のビジネス戦略についてたずねた。
両社のリーダーを集めて方針を策定
──IT業界では、今回の人事に驚いた人が多かっただろうと思います。トップの一本化によって、経営の意思決定のスピードアップを図るとうかがっていますが、社長交代の実際のところを教えてください。 ラピン レノボ・ジャパン/NECパーソナルコンピュータの組織のなかにいる私からみると、決して驚きの人事ではないというのが正直のところです。
私どもは、2011年にレノボとNECの合弁会社を立ち上げて、それぞれのパソコン事業の融合に着手したときに、ロードマップを作成しました。このロードマップで、将来のあるべき姿を想定していくつかのステップを描き、それに沿って組織の進化を進めています。これまでの2年間で、総務や経理などのバックヤード系の部門を統合したり、サプライチェーンを一つにしたりして、スピードの向上とコスト削減につながる取り組みを行ってきました。
ところが、昨年の秋口に、日本を含めた世界のパソコン市場に劇的な変化が起こりました。デスクトップやノートパソコンなど、従来型製品の需要が落ち込み、一方でタブレットなどの新型端末の人気が圧倒的に高まってきたのです。コンシューマ市場だけでなく、法人市場でも、ワークスタイルの変革に生かすことができるタブレットの需要が旺盛になっています。レノボ・ジャパン/NECパーソナルコンピュータとして、市場を取り巻く環境の激変にどう対応するか──。
私は昨年の10月に、レノボ本社のヤン・ユワンチンCEO(最高経営責任者)と打ち合わせをして、組織と人事について議論しました。市場の変化にいち早く対応し、ビジネス拡大につなげるために、これまで以上に迅速な意思決定が必要だと判断したのです。そして、もともとロードマップで定めていたレノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの社長の一本化を前倒しで実行することを決めました。
ちょうど昨夜(7月10日)に、調査会社の米IDCと米Gartnerが、レノボが2013年4~6月に、世界のパソコン市場で首位を獲得したことを発表しました。ここ10年の間、レノボの念願だったグローバルトップシェアの獲得をようやく実現することができたわけです。これを追い風に、日本でのビジネス成長にも拍車をかけていきたいと考えています。
──トリプル社長に就任されて、今はどのような動きをしておられますか。 ラピン レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの経営をより効率よくするために、緊密に連携する組織づくりに取り組んでいます。定期的に両社のリーダーを集めて、3時間に及ぶ長時間の会議を開いたり、グローバルサプライチェーンのチームなど、レノボのグローバル体制との連携にも力を注いでいます。
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