クラウドの普及を追い風に、スモールビジネスでのIT投資が盛り上がりをみせている。なかでも新興の国産ベンダーとして急激に存在感を高めているのが、モバイル決済サービスのコイニーである。同社はNTT東日本と製品戦略、営業の両面で連携しているほか、POSレジアプリやクラウド会計システムとの製品連携も積極的に進めている。バックエンドシステムに流すデータの入り口としての機能を果たすことから、同社のサービスはユーザーの業務プロセスを劇的に効率化するポテンシャルを秘めている。
オープンにPOSや会計ソフトと連携
──モバイル端末と通信環境さえあれば、場所を問わず、低コストで気軽にクレジットカード決済を導入できるモバイル決済サービスは、小規模な小売業などで急速にユーザーを拡大していますね。コイニーは、その動きをけん引している企業の一社という印象があります。 佐俣 昨年4月のサービス開始以降、ユーザー数は順調に伸びています。カードリーダーは1台目が無料で、2台目以降は有料なのですが、年内をめどに10万台を配布したいと考えています。
──どんなユーザーが多いですか。 佐俣 申し込みをした人の属性でいうと、法人と個人が半々で、平均年齢は40代です。個人事業主の平均年齢も同じくらいですので、そのボリュームゾーンにヒットしているという感じでしょうか。また、地方のユーザーも多く、首都圏とそれ以外の地域のユーザー数の割合は1対1くらいです。当初は、もっと若い首都圏のiPhone、iPadユーザーから広がっていくと予想していましたが、蓋を開けてみると違う結果になりました。
──コイニーは、産業革新機構やクレディセゾンから計14億円という大量の資金を調達し、サービス開発などで積極的に投資をされています。モバイル決済サービスの市場には、ペイパルや米Square、楽天など、強力な競合がいますが、コイニーのサービスの差異化ポイントは何でしょうか。 佐俣 国産企業らしく、スモールビジネスのお客様に寄り添うサービスを志向しています。具体的には、業界では珍しいのですが、コールセンターを設置し、電話によるサポートを行っています。電話でリアルタイムにやり取りできることは、ユーザーの安心感につながります。
1万円以下の決済ではサインレスを選択できるのもコイニーだけの特徴です。サインレスでの決済は、スーパーやコンビニなど日用品の小売りでは一般的になっていますが、カード会社との間に厳しいレギュレーションがあることから、タクシー業界でさえ普及していませんでした。それがコイニーのお客様は、業種を問わずサインレスの決済を実現できるのです。これは非常に画期的なことで、実際に1万円以下のトランザクションの6割以上がサインレスです。トラブルもありませんでしたので、さらなる普及を目指します。支払いをする側も店舗側も、手間が大幅に省け、キャッシュレス化を大きく促進するファクターになります。
また、他ベンダーとのオープンな連携を進めているのも特色だと考えています。すでにPOSやクラウド会計ソフトなどと製品連携をしています。小売りの事業者は、それぞれ販売形態が違いますので、取引データの入り口であるPOSと出口の会計システムは、お客様が望むものを何でも選べるようにしたいのです。現在は、開発者向けSDK(ソフトウェア開発キット)をパートナーに個別に提供しているかたちですが、近い将来には広く公開し、オープンプラットフォーム化することも考えています。
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