IIJグローバルソリューションズは、社名とは裏腹に、現在、売り上げの95%を日本国内で稼いでいる。しかし、親会社のインターネットイニシアティブ(IIJ)が法人向けクラウドサービス「IIJ GIO」の海外展開の本格化に取り組んでいることもあって、海外での販売やデリバリを担当するIIJグローバルソリューションズは、ビジネス展開の新たなフェーズに入ろうとしている。海外事業の拡大を率いる岩澤利典社長は、親会社よりも規模が小さく、その分、機敏に動くことができる機動性を生かして、名実ともに「グローバル」をかたちにしていく。
提案先をユーザー部門に変える
──御社はこれまでWANサービスなどを商材にして、主に日本国内でビジネスを展開してこられました。現在は、米国、中国、シンガポールなど海外での「IIJ GIO」の提供も手がけておられます。まずは海外ビジネスの状況についてお聞かせください。 岩澤 「IIJ GIO」はクラウドのインフラですから、これだけだと、提案してもなかなかお客様に響きません。そこで、当社はグローバルネットワークアウトソーシングを中心に、長い期間をかけて磨きをかけてきた独自のサービスを付け加えて、インフラと回線や運用をセットで提案することによって、受注の獲得を目指しています。
海外の売上比率はまだ5%と少ないのですが、ここにきて、グローバル事業に確かな手応えを感じるようになってきました。例えば、中国に進出しておられる日系企業のお客様。これまで現地のデータセンター(DC)のラックを借りてシステムを運用するユーザー企業が多かったのですが、最近はDCの利用料が高騰していることもあって、システムをクラウドに移してコスト削減を図りたいというニーズが旺盛になりつつあります。当社はこの状況を追い風に、製造や金融といった業種のお客様から発注していただいています。とくに、金融業はクラウドの導入に慎重なので、クラウドの信頼性とIIJグループの認知度が高まってきたことの証だと実感しています。
──海外事業が軌道に乗ったとはいえ、たくさんのユーザー企業を獲得し、しっかりとした利益獲得基盤ができるまでは、販売体制の整備をはじめ、まだまだ課題が多いと思いますが……。 岩澤 今年3月に営業活動を開始したシンガポールでは、このほど、現地のシステムインテグレータ(SIer)と提携を結びました。当社のクラウドにそのSIerのアプリケーションを組み合わせて、現地の企業に提案していきます。こうした協業によって、パートナーの販売体制を活用して日系企業以外のお客様へのアプローチができるようになるので、拡大していきたいと考えています。ポイントは、先ほども申し上げたように、単なるクラウドではなく、ITをビジネス上で役立つソリューションとして提案することだと捉えています。それに合わせ、販売先を情報システム部門からユーザー部門に変えることも不可欠になります。
当社は、クラウド型のテレビ会議システムを提供しています。画質や音質にこだわるほか、回線が切れにくく、本社と海外拠点の間で経営の決断について議論するために最適なツールですが、お客様の情報システム部門からは「うちはもうテレビ会議が入っているからいらない」と言われたりして、なかなか売れませんでした。ところが、直接、お客様のユーザー部門に提案してみたら「現在のテレビ会議は品質が悪くて、使い物にならない」という不満の声をうかがいました。そして、デモを行ったうえで、当社システムに置き換えることを提案し、受注に結びつけた案件がいくつか出ました。今後もユーザー部門に営業をかけて、案件を獲得していきます。
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