日本オラクルは、今年4月に杉原博茂氏が社長兼CEOに就任し、「ナンバーワンクラウドカンパニー」を新たな目標に掲げた。データベース(DB)ソフトで圧倒的なシェアをもち、近年ではサーバーなどのハードウェアやアプリケーションレイヤの有力ベンダーを買収し、グローバルな総合ITベンダーの日本法人として成長を続けている。しかし、グローバル大手のライバルベンダーたちがこぞってクラウドに舵を切るなか、同社は、少なくとも日本市場ではクラウドビジネス市場のメインプレイヤーであるとはいい難い。幅広いポートフォリオと顧客基盤をどのように活用し、何を強みに新時代のトレンドに対応していくのか。杉原社長に成長ビジョンをうかがった。
最後の大物、ラリー・エリソンは健在
──杉原さんは、オラクルの競合を含む多くの外資系ベンダーを経験されたうえで、現職に就かれたわけですが、とくに外資勢の他ベンダーと比べたオラクルの強みをどうみておられますか。 杉原 ITは、非常に技術の寿命が短い産業ですが、オラクルの技術は寿命が長い。これが最大の特徴であり、強みです。市場で絶対的な優位性をもつデータベース(DB)ソフトを核にして、そこから派生するさまざまな尖った技術を継続して保持しているわけですが、これを支えているのは、R&D(研究・開発)への積極的な投資です。競合他社のR&D投資は売り上げの5%ほどですが、オラクルはなんと13%で、ここ10年間のR&D投資は、累計で約3兆4000億円にのぼります。他の大手ベンダーの経営者は軒並み創業者から代替わりしていますが、オラクルは創業者のラリー・エリソン(CEO)が「最後の大物」として経営を引っ張っている。この規模のR&D投資をオラクルが実現できているのは、彼が技術者として健在であることの証です。
──昨年10月から半年間、杉原さんは米オラクルで仕事をされていますが、日本オラクル社長に就任する準備だったと理解していいのでしょうか。 杉原 違います。ワーキングビザも取りましたし、私は米国に骨を埋めるつもりで米オラクルに入社したんです。マーク・ハード(社長)直下で本社のスタッフとして働くことができるというのは、非常に魅力的でした。また、ラリー、マーク、サフラ(・キャッツ社長兼CFO)らとのコミュニケーションを通じて、常に変化を目指し、ベンチャースピリットをもち続けているオラクルの企業文化に感銘を受けたという部分もあります。事実、オラクルはDBのナンバーワン企業の座に安住することなく、その強みを生かして、クラウドに向けて新しいチャレンジに踏み出す確固たる意思をもっています。非常にエキサイティングな事業に参画できると思っていました。
──本社のグローバル担当役員として、日本市場の課題をどうみていましたか。 杉原 とくに失敗はしていないし、悪くはないが、グレートでもないというのが、本社からみた日本オラクルの評価です。また、他の地域に比べて、DBに大きく依存している点も特徴です。それ自体は必ずしも悪いことではないのですが、DBの強みを面展開して、成長のモメンタムをつくるのが、日本オラクル社長としての私のミッションです。
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