2014年6月、コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)の会長に荻原紀男氏(=豆蔵ホールディングス社長)が就いた。「ドラスティック(抜本的)にCSAJを変える」と言う。挑むのは、現会員数の二倍にあたる1000社の会員を集めた巨大組織の形成。「ソフト産業の地位を国内で高めて、世界に挑みやすい環境をつくりたい」と、実現するためには軋轢覚悟で古き慣習を変えるつもりだ。
前線に立って自ら動く
──8年間会長を務めた和田成史さん(現名誉会長、オービックビジネスコンサルタント社長)からバトンを受けられましたね。荻原 2013年の9月頃だったと記憶していますが、和田さんからご指名を受けました。ただ、筆頭副会長に就いたときに、次期会長への就任をそれとなく打診されていたので、(会長になる)覚悟を決めたのは、もっと前ですね。
──「覚悟」ですか。大変な仕事を引き受けるという心境だったのですか。荻原 私は、もともとIT業界人ではないので、CSAJのことを古くから知っているわけではありません。2005年にCSAJの副会長を務める豊田(崇克)さんに紹介されて入会し、その後に理事、副会長、筆頭副会長を務めてきましたが、流れに身を任せてきただけというか……。この間は、あまり貢献できていなかったと思います。
ただ、「こうあるべき。こうしたい」というプランはありました。その実現には、過去を否定して壊さなければならないこともあって、批判を受けるかもしれないし、軋轢を生むかもしれないと感じていました。ただ、会長になったら恐れずに進めよう、と。その覚悟です。
私は、CSAJをドラスティックに変えていきます。日本のソフト産業の発展に必要なことを三つ定めて、自ら率先して進めます。CSAJの組織も人も運営方法も見直しますが、大きな変革を起こすときには、誰かに指示を出せば話が進むとは思っていません。自らが動く必要がありますので、私が前線に立ちます。豆蔵ホールディングスの社長を務めて、他の団体でも活動していますが、私の時間の半分は、CSAJの活動に費やすつもりです。
──「ドラスティック」という言葉に危機感が伝わってきます。荻原 CSAJの役割は、日本のソフト産業の発展を支援することです。会員企業のビジネスにつながる活動をしていかなければならないし、日本全体にIT産業の価値を認めてもらわなければなりません。ITは、家庭でも職場でも不可欠なツールなのに、産業全体の成長率がほぼ横ばいとか、金融や製造業などの他産業よりも下にみられているのはおかしい。もっと力のある産業であるべきなんです。CSAJというよりも、日本のソフト産業の将来に不安を感じているんです。
日本経済は停滞し、グローバル化やクラウドの普及など、ソフトベンダーを取り巻く環境は大きく変化しています。過去の延長で成長するのは難しい。ソフトベンダーが変わらなければならないとしたら、そうした企業を支援する私たちも当然、変化を求められる、ということです。
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