SAPジャパンの社長に、30代の生え抜き社員が就任──。数年前なら、このニュースを本当のことだと信じるIT業界人はどれほどいただろうか。外資系IT企業の日本法人トップは、本国から派遣された外国人や、他の外資系企業でキャリアを積んだベテランが務めることが多い。それだけに、SAPジャパンの福田譲社長の就任には大きなインパクトがあった。エンタープライズ領域を中心に、ビジネスソフトウェアの王者として君臨してきたSAPも、クラウドの大きな潮流のなかで、抜本的な変革を迫られている。福田社長が成し遂げようとしている変革のかたち、そして目指すゴールは一体何なのか。リーディングカンパニーを率いる若き経営者のビジョンに迫った。
SAPのすべてを日本の顧客に注ぐ
──正直に申し上げて、驚きの社長就任でした。このタイミングで社長に就任されたことの意味を、ご自身ではどう捉えておられますか。 福田 二つあります。一つは、SAPのグローバル化が次のフェーズに入ったということです。自分たちの会社のことと現地のマーケット、その両方を深く知る人間をトップに据えるというのは、あらゆる会社にとってグローバル化の一つのステップであって、SAPがそこに到達したことの現れです。
二つめは、タイミングです。歴代社長の平均在任期間は3~4年です。前任の安斎(富太郎氏)もほぼ3年務めましたので、交代のタイミングといっていい時期ではありました。さらに、クラウドへのシフトや、SAPのクラウド基盤であるプラットフォーム「SAP HANA」という新しい屋台骨をどう展開するか。その文脈でみても、SAP自身のビジネスモデルが大きく変わり始めています。今がトップを代えるベストのタイミングだと、本社も、安斎も判断したと理解しています。
お客様から私への期待としては、SAPのもてるものをすべて日本市場に注いで、グローバルで勝っていくための支援を今まで以上にしてほしいということに尽きるでしょう。当然、この期待には全力で応える覚悟です。
──率直にいって、グローバルで日本の市場はどう位置づけられているのでしょうか。 福田 SAPジャパンはただの販社で、本社に日本の声は届いていないのではという人がいますが、そんなことはあり得ない。中国に抜かれたとはいえ、日本は世界第三位のGDPを誇る国で、SAPが業務を展開する35か国中、トップ5に入るマーケットであり続けています。SAPのグローバルの開発者と話していても、日本で通用するものは世界で通用するというのは共通認識です。大きな市場であることは間違いないし、ここでビジネスを拡大させること、そして製品のクオリティを高めるフィードバックを積極的にやっていくことは大きなミッションです。
──人材育成も中心施策に掲げておられます。短期では人材を輸入してグローバルのベストプラクティスを注入し、中期では日本の社員をグローバル人材として育てていく方針とか。 福田 生え抜きの日本人というある種のブランドを背負った人間がトップに就いたのは一つのマイルストーンですが、次の段階として、スイスのネスレのように、二人として同じ国出身の役員がいない会社にすることも考えられるでしょう。私が本社の役員を狙っているわけではないですよ(笑)。ただ、私個人も含めて、日本にオリジンをもつ人材がグローバルで活躍できるようにするのも、私に課せられた責任だと思っています。
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