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CRI・ミドルウェア ミドルウェアでサーバー負荷を軽減

2002/06/10 16:21

週刊BCN 2002年06月10日vol.944掲載

 

ゲーム機向け技術を応用

 ソフト開発のCRI・ミドルウェア(野沢隆代表)は、サーバー向けミドルウェアの開発に乗り出す。同社はゲーム用ミドルウェア開発大手で、プレイステーション2(PS2)やXbox、ゲームキューブ向けのゲームソフト約100タイトルにミドルウェアを供給してきた。ディスクドライブやCPUの負荷を大幅に軽減するミドルウェアが中心であるため、これらを応用し、一度に大量のアクセスに耐えられるサーバー用の負荷軽減ミドルウェアとして、早ければ7月にも評価版を出す。

 ゲーム機は、ゲームの進行に合わせて、ディスクドライブから必要なデータを随時読み出す。例えば、BGMを流しながら、雨が降る音を上から被せる。ゲームの主人公が海へ行けば、潮の打ち寄せる音を加え、山へ行けば風の音や鳥の鳴く声を加える。足音などの効果音もある。これに、背景映像が加わる。

 BGM、雨の音、潮の音など、すべてがディスクの別々の場所に記録してあるため、普通にデータを読み出していたのでは再生が間に合わない。そこで同社では、ディスクから音声データをあらかじめ先に読み出し、メモリ上に展開するミドルウェア「ADX」を開発。CPUの負荷を最小限に抑える機能も持ち合わせる。今回はこのミドルウェアをサーバー向けに製品化する。

 押見正雄部長は、「DVD-ROMやハードディスクなどのドライブは、同時に複数のデータの読み出しを命じると、急激に読み出し速度が遅くなる。データの読み取り部分(ピックアップ部分)が、必要なデータを求めてディスク上を行ったり来たりするためだ。この動作ロスで読み取り速度が遅くなる。当社のミドルウェアでは、先読みしてメモリ上にデータを蓄えることで、ドライブの負荷を飛躍的に軽減した。この仕組みをそのままサーバーに応用する試みが、今回のサーバー向けミドルウェア製品だ」と話す。

 今後、ゲームがネットワーク化し、ひとつのサーバーに多くの利用者がデータを求めて集まる。だが、現状では利用者がそれぞれ異なるデータをサーバーに求めると、どうしても遅延が発生する。実時間性を重視するゲームでは、サーバーの反応速度の遅さから来る遅延は致命的。この問題を解決するために、同社のミドルウェア技術をサーバー用に応用することに決めた。ADXは、DVD-ROMドライブだけでなく、サーバーのハードディスクドライブにも同じ効果を発揮する。

 ADXは、基本的に音声データの読み出しと再生を効率化するミドルウェアだが、これとは別に、映像を効率的にドライブから読み出すミドルウェア「ソフデック」(ソフトデコードの略)もサーバー向けの応用を目指す。ソフデックは、MPEG映像を、美しく再現するだけでなく、1枚のディスク(ドライブ)から複数の映像を同時に取り出せるのが特徴。これも、ADX同様の“先読み技術”を使ったもので、サーバーの負荷を大幅に減らす。

 押見部長は、「これまでゲーム業界向けにしか売り込んでこなかったため、ほかの分野での需要がどこまであるのか正直言ってよく分からない。だが、少なくともネットワークゲームなどでサーバーの負荷軽減が求められているのは確か。当面は、この方面での売り込みに力を入れる」と、新規需要の開拓を狙う。

 同社はセガ系の開発会社で、01年8月に設立。今年度(03年3月期)は3億円の売り上げを見込む。

 アドレスはhttp://www.cri-mw.co.jp/。
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