【杭州発】中国浙江省・杭州で、5月23~26日の4日間、「第3回天堂論壇(さくらフォーラム)――2012国際IT企業ビジネスシンポジウム」が開催された。中国の産業転換の促進やIT業界の国際分業の深化、中国IT市場の開拓などを目的とするもので、杭州市人民政府が主催し、杭州市対外貿易経済合作局、杭州市対日サービスアウトソーシング連盟が共催。会場のホテル「杭州三立開元名都大酒店」には、日中のITビジネス関連企業などの関係者426名が集まった。

開会の挨拶をする杭州市対日サービスアウトソーシング連盟・丁偉儒理事長

 5月24日に開かれた講演会では、日中のITビジネスにかかわるキーパーソンが次々に登場した。まず、杭州市対日サービスアウトソーシング連盟の丁偉儒理事長が、「共同行動」「中国マーケットへフォーカス」をテーマに掲げ、「日中両国のIT企業が手を携え、プロジェクトへの取り組みを一層促進したい」と開会の挨拶。続いて杭州市人民政府のコウ桂莉(コウ=にんべんに冬の二点がにすい)副市長が登壇し挨拶。「杭州は、アウトソーシングビジネスのモデル都市として大きく発展を遂げている。とくに日本との関係は深く、IT関連の取引高は2億6000万米ドルを突破し、拡大を続けている。杭州は人材も豊富だ。今後とも日本を重要なパートナーと捉え、さらに発展させていきたい」と語った。

政府代表挨拶をする杭州市人民政府・コウ桂莉(コウ=にんべんに冬の二点がにすい)副市長

 基調講演では、日本からNTTデータの岩本敏男・代表取締役副社長執行役員が登壇。「ビッグデータ時代のIT活用」と題して講演した。杭州や北京、上海、重慶、大連など、中国各地に18の拠点を構えるNTTデータは、オフショアビジネスと中国国内ビジネスの2本柱で事業を展開。中国の拠点で毎年300名の若手社員研修を実施するなど、中国市場を極めて重視している。岩本副社長は、CPU、ストレージ、ネットワークが十分に成熟した現在、「今まで無理だとあきらめていた壁を崩すことができるようになった」と、ビッグデータの可能性を語った。

基調講演を行うNTTデータの岩本敏男副社長執行役員

 そして、中国でのビッグデータ活用事例として、2010年から江蘇省江陰市で実証実験を実施しているBRIMOS(橋梁モニタリング)システムを取り上げ、これを今年から他の都市へも展開していくことを明らかにした。さらに、北京で実施している新交通システム実証実験も紹介。1万2000台の参加車両からデータを収集し、エコ運転のアドバイスや最適なルートのガイダンスなどを通じて交通渋滞解消を目指すと同時に、エコ運転実現に向けたサポートの取り組みを説明した。

会場には400名を超える参加者が集まった

 続いて、中国側から、北京アウトソーシング協会の曲玲年理事長が「中国ソフトウェアおよび情報サービス市場」と題して基調講演を行った。「2011年、中国のソフトウェア・情報サービス業の市場規模は1兆8400億人民元で、対前年比38%の伸びとなった。これは電子情報産業全体に比べて、ほぼ倍の成長率だ」と現状を紹介した。さらに曲理事長は、インドのIT市場に着目。「2012年にインドのオフショア市場は1000億米ドルを突破する」との見方を示し、「中国の約8倍の規模で、インドの輸出額の25%を占める一大産業になっている」とした。また、「雇用拡大にも貢献し、直接効果で280万人、間接効果では890万人の雇用を生み出している」と分析した。さらに「インドを手本に中国もオフシェア市場を拡大すべき」として、国際アウトソーシング市場開拓の重要性を強調した。

基調講演を行う北京アウトソーシング協会・曲玲年理事長

 続いて行われたテーマ別部会の「金融保険」部門では、日本からニッセイ情報テクノロジーの桒原靖執行役員と、イオンアイビスの縣厚伸社長が講演、中国からは信泰人寿保険公司の張静波チーフ・リスク・オフィサーが講演した。また「商業流通」部門では銀泰百貨集団の金龍法CIO、「公共交通」部門では日本電気の木戸脇雅生執行役員など、「組み込みソフト」部門では富士ソフトの坂下智保代表取締役社長などが、それぞれ中国での最新動向について講演した。

 最後にまとめとして、杭州市対日サービスアウトソーシング連盟の丁理事長が再び登壇。「中国側は、市場はオープンで未熟ながらもポテンシャルが大きいことが、一方の日本側はいずれもトータルソリューションを持っているうえ、レベルが高くほぼ完成されていることが、改めてわかった。また、中国を非常に重視していることもわかった」として、「日中間のバランスが重要」と話した。


会場の外には展示コーナーも設けられた

 さらに丁理事長は、「日本式のシステムは安定しているテーブルのようなもの。急に動かすと壊れてしまうかもしれない。意思決定は、リスクヘッジのためのプロセスになっている。一方、中国は激しく変化しながら成長している途上にある。自転車のようなもので、スピードを出して走らなければ倒れてしまう。いかにチャンスをつかむかが重要であり、チャンスをつかめないことがすなわちリスクだ。こうした、まったく違うものをどうバランスしていくかが、両国のIT市場拡大にとって重要になる。自転車の荷台にテーブルを乗せて運ぶような工夫をするような、発想の転換が必要だ」と述べた。そして最後に「次回は成果を分かち合うことがキーワードになるよう、楽しみにしている」と語り、フォーラムを締めくくった。来年の第4回さくらフォーラムは、2013年5月15~18日に開催される予定。(道越一郎)