【ラスベガス発】米ネバダ州ラスベガスで開催している米IBM(ジニー・ロメッティCEO)の年次イベント「IBM PartnerWorld Leadership Conference 2013(PWLC)」の2日目は、IBMの次世代ITインフラ「IBM Smarter Computing」の技術力や優位性、エンハンスなどに関する情報が提供された。また、今期(2013年12月期)、最もフォーカスしている領域「ミッドマーケット(中堅市場)」向けの新展開や、システム・ソフトウェアの販売量に従ってパートナーに支払う「インセンティブ」などに関するゼネラルセッションがあった。

新コンピューティングを使いこなせ

 この日のゼネラルセッションの司会を務めたグローバル・ビジネス・パートナー担当のマーク・ヘネシー ゼネラルマネージャーは、これまでのおさらいの後、「『Smarter Computing』など、当社の高い技術力で構成した新しいITインフラを使いこなすことができるかできないかで、勝ち組にも負け組にもなる」と語り、オープンで革新的なIBMのエンタープライズ・ソリューションを顧客に提供し、高い付加価値を与えてほしいと告げた。

 また、昨年、IBMが先行して提供を開始した垂直統合型システム「PureSystems」の対抗製品が競合他社から出てきたことに触れ、「当社は多くの人材を投入し、特に米オラクル製品などのベンチマークを行っている。常にベストの機器を提供できる」と対抗心を露わにした。セッション前のPVでは、国際ヨットレース「アメリカズカップ」に出場した米オラクルが出資する「オラクル・チームUSA」の艇が転覆するシーンが写し出され、聴衆者の笑いを誘っていた。

Powerシステムを次世代へ

 続いて登壇したシステム&テクノロジー・グループのロッド・アドキンス シニアバイスプレジデントは、インテルに対抗し、IBMが誇る「Power Systems」や「PureSystems」に関する最新の進捗状況を公表した。「サーバー・システムは世界で収益がNo.1で、ここ数年継続している。2013年も、成功裏に終わるだろう」と、次世代コンピューティングの継続的な開発や販売投資をすることで、確固たる地位を築くことができるとした。

システム&テクノロジー・グループのロッド・アドキンス シニアバイスプレジデントは、IBMの次世代ITインフラを的確に顧客に提供できるよう、パートナーのスキルアップを求めた

 「ITの技術的な進化は、この30年で今が最もエキサイティングだ。先例のない変革を顧客にもたらすことができるし、パートナーにとっては新しい販売の機会が増える。わくわくしている」。アドキンス シニアバイスプレジデントはこう語り、設計段階からサーバー、ストレージ、ネットワークを最適に統合し、ミッドマーケット向けに昨年投入した「IBM PureFlex System」など、「PureSystems」ファミリーのさらなる性能向上を約束した。

 アドキンス シニアバイスプレジデントは、「IBMの考えはシンプルだ」としたうえで、エンハンスのポイントを三つ挙げた。一つは、ビッグデータの利用に対応し、「Power Technology」や昨年8月に買収したTexas Memory Systems社のフラッシュメモリ技術などを利用したデザインすること。二つ目は、「システムを効率よく動かすためには、ソフトウェアが鍵を握る」として、社内開発と戦略的なパートナーの技術を取り入れて、クラウドコンピューティングなどを想定して運用管理の効率化を実現するシステムにするという。

 三つ目は、「OpenStack」「OpenFlow」などと「Power Technology」を使って革新的なシステムにすることを「今年中に計画している」(アドキンス・シニアバイスプレジデント)こと。この三つの観点から開発を進めることで、次世代ITインフラ「Smarter Computing Infrastructure」は、「アナリティクス(分析)機能だけで、70%の性能アップになる」と語った。

新しいスキルへの投資を拡大

 2月には、専門家の知見とスキルを実装することでコンピューティング資源を最適に統合し、計画から導入、運用までの作業を簡素化する「エキスパート・インテグレーテッド・システム」で、高性能プロセッサ「POWER7+」を採用したクラウド向けシステム「IBM PureApplication System W1700」を投入。アドキンス シニアバイスプレジデントは、「下位から上位までのすべてに対応し、BIの『Cognos』の認定率やアナリティクス、自動化性能が40%向上した」と述べ、ビッグデータ・ビジネスを加速させる一端となるとした。

 しかし、IBMは高性能なITインフラだけを販売するのではない。アナリティクス(分析)、クラウド、スマータープラネットの3分野を成長領域として、「IBM製品をクロスセルする」(アドキンス シニアバイスプレジデント)ことを推奨するために、ビジネス・パートナー(BP)への対価であるインセンティブのプログラムを大幅に見直した。クロスセルを効率化する「Invest in your skills」という技術志向の教育施策を展開し、より高い価値を提供したBPに対して、相応のインセンティブを支払う。

 PWLC2013では、ゼネラルセッションに登場した幹部が「Our “Shared agenda”」という言葉を発することが多かった。これは、共通のagenda(課題)をIBMとBPなどの関係各社が共有し、製品開発のプランやリサーチを一緒に考えていくという概念だ。アドキンス シニアバイスプレジデントは「コンピューティングが新しい時代に向かう。新しい価値を生み出し、顧客を成長へ向かわせるために、共同でボトルネックを解決し、新しいパターンやトレンドをつくる」と、聴衆者に参加を呼びかけた。

 「Shared agenda」については、システムインテグレータ(SIer)やディストリビュータ、ISV(独立系ソフトベンダー)、MSP(マネージド・サービス・プロバイダ)などと共有し、推進していく。特に、「Smarter Computing」を提供する際のユーザー企業の窓口が、IT部門以外が57%だったことから、製品・サービスだけでなく、顧客開拓でもパートナーと共同戦線を張る方針だ。

バリューの高いソフト販売のパートナーは9割が収益増

 中堅市場向けソフトウェア・ビジネスのパートナー担当であるマーク・レジスター バイスプレジデントは、IBMのソフト販売の現状を伝え、新たな施策を明らかにした。IBMのソフト製品の販売にサーティフィケーション(認定)しているBPは、「全体として収益が18%増加した」という。顧客に高い付加価値を与える「Values Certification」の認証をもつITベンダーに限れば、90%も収益を向上させた。レジスター バイスプレジデントは、「IBMのソフトを売れば、確実に利益を高められる。今期は認定率をもっと上げたい」と述べた。

 また、高いスキルを保持しているいるパートナーに支援施策を提供するためのIBMグローバル共通のパートナー向けプログラムのうち、「PureFlex and Flex System スペシャリティー」の認定を本格化するという。セッション後に入った情報では、日本のCSIソリューションズが第1号として認定された。

中堅市場向けソフトウェア・ビジネスのパートナー担当、マーク・レジスター バイスプレジデントは、パートナーの新しいバリューに報奨金を提供するとした

 昨年は、BPがIBMソフト製品を販売することで支払う報奨金プログラム「Software Value Incentive(SVI)」で、SaaS販売でのオファリング(BPに対するオファー)を行い、250か国のBPが参加した。SaaS販売をしたBPは、20~30%も売上高を向上させたという。今期の第1四半期では、「ビッグデータを使ったシステム提供など、BP独自のケーパビリティ(組織的能力)に対する認証を開始している」(レジスター・バイスプレジデント)と、さまざまなパートナーの価値や能力を認定し、対価を増やしていく。

 ISV関連では、ISVとディベロッパー担当のジム・コーゲル ゼネラルマネージャーが、司会のヘネシー ゼネラルマネージャーとともに登壇。対談形式で、事例を交えながら協業するISVとのエコシステムなどについて議論した。コーゲル ゼネラルマネージャーは、「ソーシャルからアナリティクス、グローバル・ビジネスまで、IBMとISVパートナーは、製品や提供方法などのストーリーを一緒につくっている。10年ほど前までは、ISVがパートナーが仕事した成功例をみて、IBMは後から立ち上がっていた」として、パートナーとエコシステムを築き、一体となって市場拡大に向けて動く方針であることを告げた。

ISVパートナーとエコシステムを築くことを宣言。右がジム・コーゲル ゼネラルマネージャー

中堅市場の成長はMSPや顧客獲得策が鍵

 IBMが今期の重点領域としている中堅市場(ミッドマーケット)については、担当責任者のエドワード・アブラムス バイスプレジデントにインタビューした。アブラムス バイスプレジデントは、中堅市場を攻めるフォーカス・ポイントとして、四つの方向性を示した。

中堅市場担当のエドワード・アブラムス バイスプレジデントは、BCNのインタビューに応じ、「市場を2~3倍にする」と語った

 一つは、データセンター(DC)事業者など、DCを所有してクラウドサービスなどを提供するMSPのプレイヤーを増やし、ITインフラをサブスクリプション・モデルで預かる仕組みや、SaaS型のクラウドサービスを拡大すること。「顧客のITをオンプレミス(企業内)から別の場所に移し、事業者側で管理することで、信頼性と柔軟性を備えたITインフラにすることができる」という。このITインフラには、「PureFlex System」など、次世代コンピューティングを採用する。

 IBMは昨年、「IBM PureFlex System」と「IBM Flex System」が提供する「MSP Edition」を投入したが、これらを利用して、新しいITインフラやアプリケーション・サービスを迅速に提供できるようにする。

 このほかのフォーカス・ポイントは、クラウドサービスを含め、CRM(顧客情報管理)やERP(統合基幹業務システム)などを開発・販売するSAPやマイクロソフトなどと連携を強化し、IBMインフラ上で最適化されたシステムを生み出すこと、顧客の購買動向や購買履歴を分析する「Smarter Commerce」のプログラムを積極的に活用し、新たな顧客を獲得すること、そして「Smarter Computing」の適用を増やすこととした。

 アブラムス バイスプレジデントは、中堅市場の伸び率について、期待値を含めて「2~3倍にする」と語った。その根拠として、「BPが強く、ソリューションがフォーカスされているほか、MSPの拡大でサービス展開が増し、マーケットの機会を生み出す仕組みもできた」ことを挙げた。(谷畑良胤)