【ラスベガス発】米ネバダ州ラスベガスで開催中の「IBM PartnerWorld Leadership Conference 2014(PWLC)」。2日目の2月11日は、IBMのビジネス戦略を中心としたセッションが行われた。朝のゼネラルセッションでは、米IBMのジニー・ロメッティ会長・社長兼CEOが登壇。「The Forces at Play(変化をチャンスに)」をテーマに、IBMの事業戦略を紹介した。注目されたx86サーバー事業に関連するコメントでは、「高付加価値事業へシフトしていく」として、それが「ビジネスパートナーにとってもメリットになる」と語った。

ジニー・ロメッティCEOは「IBMは変わる」と強調した

 「(市場の変化として)三つのビッグシフトがある」と切り出したロメッティCEO。IBMは事業戦略を「データ」「クラウド」「エンゲージメント」の三つに、大きくシフトさせていくという。それぞれの内容は後述するとして、ロメッティCEOのメッセージは、「IT市場の変化とともにIBMも変化していく。そして、より成長が見込まれる市場を開拓していく。ビジネスパートナーもついてきてほしい」に尽きる。

パートーにも“変化”を求める

 PWLCは、IBMのビジネスパートナー向けのイベント。先頃発表されたx86サーバー事業のレノボへの売却についてのコメントには、多くのパートナーに影響があるので、自然と注目が集まる。実際に、ゼネラルセッションの司会を務めた米IBM グローバル・ビジネス・パートナーズ マーク・デュパキエGM(ゼネラル・マネージャー)によれば、IBMのx86サーバーを専門に扱っているパートナーは、グローバルで1000社を超えるという。彼らは、いや応なしに“変化”を受け止めなければならない。 

ゼネラルセッションで司会を務めたグローバル・ビジネス・パートナーズ マーク・デュパキエGM

 メディアのインタビューに応じたデュパキエGMは「IBMが変わったというよりも、市場が大きく変化している。その変化に対応することの必要性をビジネスパートナーにも認識してほしい」と語った。コモディティ化が進んだx86サーバーでは、収益の向上は難しい。IBMとしては、より収益率の高い分野に事業をシフトしていきたいというのが、x86サーバー事業売却の根底にある。その売却益で新規事業を開拓していくことを予定しているのだ。

 とはいえ、すべてのパートナーが急激な変化を受け入れられるとは限らないので、今後はレノボとともにサポートを行っていく。2004年にレノボに売却されたIBMのPC事業は、法人向けは日本IBMが現在も販売を続けている。x86サーバーについても同様のサポートを行う予定だ。

教育プログラムも用意

 IBMが変化しても、ビジネスパートナーが変化しなければ、事業は成功しない。そこでIBMは、パートナー向け教育プログラム「Thinkアカデミー」を立ち上げる。「より付加価値の高いビジネスへの転換を支援したい」(デュパキエGM)という考えだ。

 さらに、ビジネスパートナー向けの経営分析サポート「Business Transformation Initiative(BTI)」を用意する。これは、パートナーのビジネスを診断・分析し、事業戦略とのギャップなどを発見して、ビジネスパートナーの進むべき方向を示すコンサルティングサービスだ。「IBMは変わる。ビジネスパートナーも変わってほしい」。このメッセージは、ロメッティCEOをはじめ、PWLCの登壇者から繰り返し語られている。

進化するIBM Watson

 冒頭の三つのビッグシフトに出た「データ」と「クラウド」の文脈で、外すことができないのが、人工知能「IBM Watson」の存在だ。

 米国のテレビクイズ番組「Jeopardy!」での勝利から約3年。能力が飛躍的に向上したWatsonを、今後はクラウドサービスとして提供していく。PWLCでは、クラウド化の概要を説明し、ビジネスパートナーとともにエコシステムをつくっていくことを約束した。非常に複雑なシステム構成になっているWatsonだが、クラウド化することによって、多くのパートナーが提供しやすくなる。 

「IBM Watson」の戦略を語るインフォメーション・アンド・アナリティクス・グループのボブ・ピチアーノSVP

 ビッグデータ戦略でも、Watsonは重要な役割を担う。ゼネラルセッションに登場した米IBM インフォメーション・アンド・アナリティクス・グループのボブ・ピチアーノSVP(シニア・バイス・プレジデント)は、「Watsonのシステムは大きすぎる。そこで10の機能を部品として提供していく」と語った。日本語に対応していないWatsonだが、部品として提供されることによって、国内での展開も期待できそうだ。

 最後に、冒頭に紹介した3つのビッグシフトの3番目「エンゲージメント」について触れておきたい。日本人にはなかなかすんなりとは理解できないこの言葉だが、対象となるのは主に「ソーシャル」と「モバイル」であることから、「日常業務」と意訳したい。ビジネスシーンでのIT活用の変化に対応しようという思いが込められている。(畔上文昭)