全国約2200社のITベンダーが加盟する全国地域情報産業団体連合会(ANIA、長谷川亘会長=京都コンピュータ学院・京都情報大学院大学統括理事長・教授)は、10月16日、岡山市のホテルグランヴィア岡山で、ANIA最大のイベント「第36回全情連大会 ANIA岡山大会」を開催した。全国から約300人の関係者が一堂に会した。

 大会では、「おいでんせぇ 晴れの国岡山へ~地域から考えるICTの可能性~」をテーマに、基調講演や懇親会などを通じて情報共有・交換を行った。岡山県内の76社が加盟するシステムエンジニアリング岡山の創立30周年記念式典もあわせて開催した。

地元岡山の団体を代表しシステムエンジニアリング岡山の前坂匡紀会長が、「新しい技術で地域活性化を」と奇声を上げた

岡山IT戦略で防災・医療に取り組む



 大会の冒頭、地元岡山を代表して、システムエンジニアリング岡山の前坂匡紀会長が、「ITは社会インフラになり、一段と認識が高まった。インターネットのネットワークを通じた情報がリアルに伝達し、それを活用できる時代になった。そのことが、新しい産業を創出する。最先端の技術を生かし、新しい時代を切り開きたい」と挨拶した。

 主催者のANIA・長谷川会長は、「ANIAは1988年に創立し、最初に岡山でフォーラムが始まった。ANIAの誕生の地が、ここ岡山だ。韓国・済州や中国などの団体ともMOU(覚書)を締結し、国内にとどまらず、アジア全域にわたって地に足のついた活動をし展開し、発展していきたい」と挨拶。続いて来賓の岡山県・足羽憲治副知事が「クラウドが普及し、スマートフォンやソーシャルメディアは、社会インフラとしての重要性が増している。岡山県は、岡山IT戦略を策定し、産業・防災・医療でITの有効活用に取り組んでいる。今後もIT産業の活性化を期待したい」と述べた。

 政府関係者からは、経済産業省地域情報化人材育成推進室の小池雅行室長が登壇。「日本の稼ぐ力の強化、中小企業の活性化などに予算を重点配分した。とくに企業の稼ぐ力の分野で、ITベンチャー育成やデータ活用、攻めのIT投資などに努めていく。岡山県は、学生服生産日本一、日本のジーンズ発祥の地、点字ブロックが世界初などの特徴がある。経産省は、IT利活用の推進で地域経済の再生に努める」と、国の政策に理解を求めた。式典の最後には、次回は石川県で開催することが発表された。

地元倉敷にある大原美術館の大原理事長が、文化とITの関わりについて持論を展開した

理系の人こそ文化に触れて



 講演の最初は、倉敷の大原美術館の大原謙一郎理事長。「情報社会で『文化』を考える」と題して、と地元倉敷を紹介しながら持論を展開した。「大原美術館は、21世紀の文化の世紀、異文化の融和と日本の風格のために働き、多文化理解を示す装置だ。洋画家の児島虎次郎は、世界に渡り、世界各地を描いたが、場所によってその作風は異なる。大原美術館には、ギリシャ人の画家、エル・グレコの『受胎告知』があるが、グレコはイスラムとカトリックの両文化が共存したところに生きていた異邦人」と、一つひとつの作品にストーリーがあると語った。そのうえで、「理科系の人にこそ、美術や音楽に親しんでほしい」と呼びかけた。

施設農業分野でIT活用に注目集まる



 この後、岡山大学大学院環境生命科学研究科の安場健一郎准教授が「施設園芸を中心とした農業生産におけるICT利用の現状と今後への期待」と題して、農業ICTの現状を解説。「建設業やIT業界などで、農業に関心をもつ企業が増えている」と振ったうえで、「農業生産高は、1988年をピークに現在は年9兆円程度。NTTの売上高より少ない。ただ、中食と言われる食料産業では80兆円になる。さらに、農業労働力は65歳を超えている。そういう方々にとって、ITをどう使うかというのは重要な問題。耕作放棄地は埼玉県の広さほどで、日本の原風景が失われている」と、日本の農業をどうするかを考える必要があるとした。

 こうした農業の現状に、ITはどのように関わることができるのか。安場准教授は「まず栽培、とくに野菜栽培だ。農地栽培と施設栽培の二つのうち、施設栽培は収穫調整などができるが、農地栽培はできることが限られる。施設栽培のほうがITでできることが多く、台風などの災害にも対応できる。農地栽培でも、高齢化に対応して自動走行の農業機械の実用化や、衛星を利用した植生調査をしている。また、農業生産工程管理(GAP)を使った栽培は、ITと連動すれば簡単にできる」などと、農業で利用されている先端ITを紹介した。また、海外の動きにも触れ、「韓国には、大規模な植物工場・温室などがある。これを韓国は日本に輸出するという。ITなどを利用した農業の施設・設備が最も充実しているのがオランダだ。コンピュータ利用を30年前から積極化し、常に進化している」と説明した。

 安場准教授は、「食物生産と花き類を含む日本の施設園芸には、ITが使われておらず、うまく運用できていない。入り口としては、センサによる温度のモニタリングなどが注目されている。原油価格の高騰で、つくりたい作物をつくることができない状況にある。今はコンピュータが安くなり、DIYで数千円で入手できる。いろいろな環境制御装置がつくりやすくなっている」と、クラウドなど、ITを利活用によるさまざまな解決例を示したが、「まだまだアイデアに欠けていている。IT産業とともに考えたい」と、東アジアの関係者と新しい農業について共同研究していることなどを語った。

パネルディスカッションでは、地元の雄であるITベンダー2社が地域のIT産業について議論した(左から岡山大学の谷口副学長、両備ホールディングスの松田社長、システムズナカシマの中島社長)

産官学でIT利用を考える



 最後に、岡山県内のITベンダー経営者によるパネルディスカッションを行った。パネラーはシステムズナカシマの中島義雄社長と両備ホールディングスの松田久社長で、モデレータは岡山大学の谷口秀夫理事副学長が務めた。

 最初に議論したのは、地域での産学官連携。松田社長は「産官学のうち『学』が人を集めて議論すると活発化する。両備グループは岡山大学と包括提携して、観光誘致や災害対策、エネルギー対策、ITを活用した地域医療などの研究を進めている。ただし、成果が得られているとはいえない。今後は個別の課題に取り組みたい」と述べた。中島社長は「当社は、全国設備業IT推進会で電気工事業や管工事業の遅れたIT化の推進に取り組んでいる。具体的には、ホームページやメルマガ発行に加え、IT体験会などを開きITに親しんでもらっている」と、システムズナカシマやグループ会社の取り組みを説明した。(谷畑良胤)