ベンダーはどう動くのか

 AECの発足によって、まず、ヒトの移動が活発になりそうだ。NECは、「国境を行き来する人の数が増え、出入国管理の重要性が高まる」(海外ビジネスユニットの阪本晋理事)と捉えて、同社が得意とする生体認証技術を活用して個人認証ができるシステムの提案活動に注力する。NECは、香港入国管理局に顔認証ツールを納入するなど、ASEAN以外のアジア地域ではすでに導入実績をもっていることを生かし、今後はASEANでも案件の獲得に動く。

 さらに、「サービスの自由化によって、ヘルスケア分野でも新たな需要が創出される」(阪本理事)と先読みし、ASEAN各国の中間層が健康維持に対する意識を高めていることを背景に、ヘルスケア市場の開拓に取り組む構えだ。

 日本のITベンダーは、AECでASEANが「一つ」になることに、体制づくりの面でも対応を進めている。日立システムズは、マレーシアのIT企業との合弁会社であるHitachi Sunway Information Systems(日立サンウェイ)を2013年に設立。マレーシアを中心に、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピンでビジネス体制を築いて、ASEAN全域をターゲットに据えた事業展開を図っている。日商エレクトロニクスも、「ASEANを一つの面として捉えたうえで、包括的な体制づくりを行うことが重要」と判断。各国でのエンジニアリング機能を拡充するなど、案件に迅速に対応するための環境を整える方針だ。

 AECによって経済が発展するとみられるのは、現時点のASEANでGDP(国内総生産)が最も低い「CLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)」と呼ぶ地域だ。IIJは現在、ラオスでコンテナ型データセンター(DC)の建設を検討している最中だ。「CLMV地域では(経済が発展すれば)、スマートフォンなどモバイル端末の利用が短期間に飛躍的に普及する」とにらみ、DCを基盤に、モバイル通信の受け皿となるクラウドインフラの提供に動こうとしている。三井情報は、インドネシアで現地財閥と提携してDCを用意するなど、同社もクラウド市場の開拓を目指す。

継続的な成長のためには

 米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は、1995年、「まぼろしのアジア経済」と題した論文を発表した。アジア経済の成長は、資本と労働の過剰投入によって一時的に達成したものに過ぎないと論じる内容だ。IIJグローバル事業本部グローバル企画部長の清水博氏は、「シンガポールを除けば、今でもASEAN諸国にあてはまること」と考えて、各国政府による産業育成策はもちろん、日本のITベンダーも技術移転に取り組んで継続的な経済成長を支えることが肝心だと強調する。

 各国での法制度の整備も急務だ。日立システムズの齋藤執行役員は、「国によって商取引の慣行が異なるので、ASEAN全域で標準的なものにしていく必要がある」と訴える。三井情報では、「長期的な成長にはサービスの自由化が不可欠。そのために、外資規制緩和をはじめ、消費者保護や知的財産保護に向けた政策の共通化が重要になる」とみている。

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