昨年8月に週刊BCN+で掲載した「衝撃! ソフトバンクの中山五輪男氏が富士通移籍 AIやクラウドを全国に広める(https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20170821_157812.html)」は、大きな反響を得た。現在に至っても、ページビュー(PV)数が当サイト内で上位に位置しているほどだ。中山氏が富士通の常務理事グローバルマーケティング部門首席エバンジェリストに就任して、8か月が過ぎた。改めてインタビューし、富士通に入る前と入ったあとの違いや、今後の展望などを聞いた。

AIの勝率、18勝3敗と圧倒

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田中社長の指令は「富士通を変えてほしい」(中山五輪男・首席エバンジェリスト)

――2017年8月21日にソフトバンクから富士通に“電撃移籍”してから、8か月が経過しました。外から見た富士通と内から見た富士通では、どんな違いがありましたか。

中山 富士通に入る前、田中達也社長からは私に、3つのことをやるように指示を受けました。エバンジェリスト活動を積極的に展開し、富士通の製品・サービスの訴求活動をやってほしいというのが一つ。二つめは、富士通社内でエバンジェリストを育成して欲しいということでした。最後は、「常務理事」という役員として経営に参画し、戦略立案に携わるようにという要請でした。

 本題に戻しますと、外から見た富士通は、ソフトバンク在籍時に見ていた印象ですが、固い典型的な国産ITベンダーというイメージがありました。しかも、説明が小難しい。ただ、まじめな会社であると感じていました。以前、在籍していたソフトバンクは「でっかいベンチャー企業」というイメージの会社です。そこから老舗のITベンダー、富士通に入社したわけですが、文化の違いはありました。

――どんな文化の違いがありましたか。

中山 最も驚いたのは、紙のドキュメントの多さです。ソフトバンクは、孫正義社長が「紙を使うのは社員ではない」とばかりに、全社的にペーパーレスを施行しましたので。富士通では、業務分掌の説明や各部門からの製品・サービスの説明にきましたが、資料は紙ベース。入社して1週間で、机の引き出しがいっぱいになってしまうほどでした。一方、技術力の高さは想像以上でした。人工知能(AI)や量子コンピュータの技術開発などです。それは、エバンジェリストにとっては、いい環境に身を投じることができたと感じました。

――ソフトバンク時代は、年間300回以上の講演をこなしていました。富士通に入ってからは、さすがに減ったと思いますけど、回数はどう変わり、依頼を受ける講演内容はどう変化しましたか。

中山 講演回数は、ソフトバンク時代の8割程度で、常務理事という立場で会議が増えたことが要因です。このペースは、今後も変わらないと思います。内容として要望を受けるのは、AIに関連する内容が多いです。最近では、量子コンピュータや「働き方改革」などになります。いままでは「働き方改革」の話題は少なかったのですが、日本マイクロソフトと富士通のAIを組み合せ、働く人を中心にした働き方改革に必要な新たなソリューション(*1)を開発中であるため、その関連で講演する機会が増えました。

*1)日本マイクロソフトの統合型クラウドサービス「Microsoft 365」と、それをベースとして富士通が社内外で推進してきた企業へのグローバルコミュニケーション基盤導入の中で蓄積してきた知見やノウハウ、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(Zinrai)」とマイクロソフトの「Microsoft Azure」 上で提供されるAIプラットフォームサービスを組み合わせた新たなソリューションを共同で開発することで両社は協業した。
 
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「富士通の技術力の高さは、エバンジェリスト活動に好影響を及ぼす」と話す中山五輪男・首席エバンジェリスト

――富士通の中山さんとしての講演は、何度か聞いていますけど、やはり、御社のAI「Zinrai」に関する内容は受けているように感じました。私自身、Zinraiの存在は知っていましたが、競合他社に比べてどうで、なにができるかまでは知りませんでした。

中山 私も、ソフトバンク時代に富士通のZinraiは知りませんでした。富士通に入って調べてみたら、年間の案件数は国内だけで760件を超えていました。これって、すごいことですよね。この案件のうち、100件程度は本番環境に移行し導入できています。残りは、PoC(概念検証)の段階にありますが、この案件数を脅威に感じる競合ITベンダーが多いはずです。直近の戦績では、競合の某AIとコンペになり、18勝3敗で富士通が圧勝しています。

――なぜ、富士通のZinraiはそんなに勝てるのですか。

中山 富士通は、システムインテグレータ(SIer)として、古くから一つひとつの顧客に真摯に向き合い、営業もシステムエンジニア(SE)も含めて顧客を理解できている。私が顧客に聞くと、「近くにいる富士通」という安心感があるようで、外資系のコンピュータメーカーに比べ、長く契約することを考えると富士通を選択することになるようです。AIに関していえば日本語処理が重要で、そこでの富士通のレベルは高い。30年以上も前からAIの研究開発を行っているので、自然言語処理を含め技術力が長けています。Zinreaiは、日経BPの「パートナー満足度調査2018」のAI部門で1位を獲得しました。

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