NTTデータが中国とAPAC地域でのビジネスを加速させている。2017年7月1日の組織改編で「中国・APAC事業本部」を新設して以降、積極的に現地の市場で事業を展開。日本との連携強化による効果も生まれている。陣頭指揮を執る宇平直史・中国・APAC事業本部長は、17年の売り上げは前年に比べて「20%以上伸びた」と説明し、「これからも二ケタ成長を追いかける」と意気込んでいる。(上海支局 齋藤秀平)

ペイメント領域の動向に注目


――中国やAPAC地域の市場について、NTTデータのなかでどのように位置づけているか。

 
NTTデータ
宇平直史
中国・APAC事業本部長

1958年12月生まれ。東京都出身。
81年3月に一橋大学経済学部を卒
業後、同年4月に日本銀行に入行
し、米国ワシントン事務所長や決
済機構局参事役、札幌支店長など
を歴任。88年3月にロンドン大学経
営大学院(LBS)修士卒業。2011年
にNTTデータに入社後、グローバル
事業本部シニア・スペシャリストなど
を経て、17年7月から現職。中国の
地域統括会社NTTデータ(中国)投
資と中国国内向けビジネスを展開
するNTTデータ(中国)の董事長も
務めている。
 中国とAPAC地域には、製造業やリテール、金融など、幅広い業種の日系企業が進出しており、それぞれの企業の規模も大きい。そうした日系企業をサポートしていくうえで、中国・APAC地域は非常に大事な市場だと位置づけている。世界のIT投資額をみると、北米がナンバーワンで、次が西欧になっている。ただ、伸び率で考えると、中国とAPAC地域は非常に高い。10年後を考えた場合、中国とAPAC地域の存在感はより一層、大きくなるとみている。

――17年の組織改編の際、「日本との連携強化」がキーワードになった。この1年の手ごたえは。

 日本との連携については、この1年でかなり進んだ。そして、今後はさらに加速すると思っている。日本との連携で効果が出ていることの一つはアカウント対応で、日本企業のグローバルアカウント対応だけでなく、欧米企業向けのビジネスも伸ばすことができている。今は日系企業と欧米企業の割合が多いが、今後は中国やAPAC地域の大手企業も狙っていく。NTTデータの質の高いシステムとグローバルネットワークは、国外に進出する中国やAPAC地域の大手企業にとってメリットになり、これからはそういった企業からのニーズも増えていくとみている。

――中国・APAC地域でのビジネスはどのような状況か。

 17年の中国・APAC事業は、売り上げベースで20%以上伸びた。そのなかでローカル市場向けの事業については、30%以上成長した。グローバル展開で蓄積した最先端の技術を売り込み、徐々に現地の大企業との取引を増やすことができている。ローカル市場向け事業の売り上げについては、今後5年くらいは市場の成長率を上回る成長を目指しており、人や技術に対しては積極的に投資していくつもりだ。

――とくにどのような領域に注力しているのか。

 中国では、デジタルマーケティング関係を強力に進め、日系企業向けと欧米系企業向け、中国系企業向けのそれぞれで売り上げを伸ばしている。中国の経済を考えると、中産階級がどんどん増えており、この領域は今後10年くらいは伸びていくことが期待できる。さらに、これからの中国では、自動車などを対象としたコネクテッドの領域についても、将来の伸びを見据えて投資しているところだ。電気自動車に関しては、中国がかなり力を入れている。今までは日本や欧米のブランドが強かったが、将来的に市場の様相が変わる可能性がある。今のうちに中国系の有力企業に対してビジネスを拡大することを狙っている。

 一方、APAC地域全体では、この1年は「フォーカス」をポイントに取り組みを進めてきた。具体的には、日本との連携が強いシンガポールやタイ、マレーシア、インドネシアに焦点をあて、それぞれの国から特定の製品やソリューションをAPAC地域全体に供給するデリバリー体制を構築しようとしている。APAC地域を効率的に攻めることが狙いだ。

――日本向けのオフショア開発についてはどのように考えているか。

 日本の高度なIT人材の供給が足りなくなることは目に見えている。そのため、日本に人材を供給するという観点で、中国やAPAC地域での日本向けのオフショア開発は、まだまだ伸びる余地があると考えている。人材育成を目的に、ビッグデータや人工知能(AI)に関する知識や能力を身につける先進技術センターを中国北京市につくるなどの取り組みを進めている。

――中国・APAC地域で注目しているIT技術やサービスはありますか。

 中国・APAC地域では、やはりペイメントに注目している。とくに小売りのペイメントは、日本よりも面白い展開をしているので、銀行の役割を含めて今後の動向には非常に関心をもっている。決済関係はNTTデータの主要業務なので、この領域にはしっかり入っていくことを考えている。また、フィンテックやブロックチェーン技術についても、活用の幅が広がっており、面白い分野だと思う。

 いずれにしても、新しい世界のなかにしっかりと入り込み、変化よりも一歩先にいけるようにしたい。

――最後に2年目の抱負を。

 ローカル市場については、少なくとも二ケタ以上の成長を続けることを目標にしている。これは中国でも、APAC地域でも同様だ。中国に関しては、デジタル関係の能力をもっと身につけ、製造業やリテール、金融を中心に多国籍企業の売り上げを増やしていく。中国企業向けの事業についても伸ばしていきたい。APAC地域に関しては、マーケットフォーカスとデリバリーフォーカス、日本との連携を柱に、売り上げを大きくしていく。欧米企業に比べると、中国とAPAC地域での存在感はまだ低いので、この部分を大きくすることを重要視していきたい。