中国最大の携帯電話事業者・中国移動は、NTTドコモと協業し、日中両国の携帯電話網を利用できるIoT機器向け通信サービスの提供を開始した。「eSIM(Embedded SIM)」と呼ばれる、ソフトウェアで書き換え可能なSIMを用いることで、物理的なSIMカードの交換をしなくても、低廉な料金で中国でのモバイル通信が可能となる。日本のユーザー企業に対してはドコモが窓口となり、通信や運用支援などのサポートをワンストップで提供する。

 産業用の機械・車両などのメーカーでは、稼働状況の把握や保守サポートのため、製品に通信モジュールを搭載し、携帯電話網を通じて遠隔で製品を管理するIoTソリューションを強化している。このような機能をもつ製品を海外に輸出し、同様のサービスを提供する場合、日本国内の通信契約のまま現地の携帯電話網に接続すると、高額な国際ローミング料金の支払いが必要となる。

 通信費用を抑えるには、現地携帯電話会社と契約し、通信モジュールに現地のSIMカードを装着する必要があるが、通信契約の事務処理、仕向地ごとの部材の在庫管理、SIMカードの交換といった手間が発生するため、海外向けの製品でIoTサービスを提供する際の難所となっていた。

 中国移動とドコモの連携サービスでは、eSIMの管理サーバーを遠隔で変更することで、eSIMを組みこんだ機器が日本にある間はドコモの回線、中国に輸出された後は中国移動の回線を利用して通信が可能。管理サーバー変更後のeSIMは現地契約のSIMカードとしてふるまうので、国際ローミングよりも大幅に安い料金で通信が行える。

 eSIM自体はタブレット端末などでも採用例があるが、従来はeSIMの書き換えを行う携帯電話会社同士が、それぞれ同じベンダー製のeSIMを採用している必要があった。中国移動とドコモの連携では、移動体通信業界の国際団体・GSMAが定めたeSIMの標準仕様(※)に準拠したことで、異なるベンダーのeSIMを採用する事業者間での切り替えが可能となった。両社によると、マルチベンダー間でのeSIM連携は世界初の事例という。
 
6月末に上海で行われた通信展示会で、中国移動はドコモとの協業を発表

 中国移動は、香港に本社をおく子会社のChina Mobile International(CMI)を通じて国際事業を展開しているが、CMIは今年5月に日本法人を設立しており、日本企業の中国進出支援の強化に動いている。また、ドコモでは今回の中国移動との連携のほかにも、IoT分野で海外の携帯電話会社とのアライアンスを拡大しており、ドコモが窓口となってコンサルティングサービスを合わせて提供することで、企業によるIoTサービスのグローバル展開を支援していく。(日高 彰)
※ Remote Provisioning Architecture for Embedded UICC Technical Specification Version 3.1