週刊BCNは10月5日、仙台市内で最新のITトレンドと商材を解説するセミナーを開いた。「業界の“今”がわかる!有力商材が見つかる!SIer・リセラーのためのITトレンドセミナー」と題し、文字通りSIer・リセラーを対象に、法人向けIT市場の注目ベンダーが最新注力商材やそのパートナープログラムを紹介するとともに、識者がIT市場のテクノロジーやビジネスモデルのトレンドを解説した。

 冒頭、経済産業省東北経済産業局地域経済部情報政策室室長補佐の後藤英之氏が挨拶に立ち、経済産業行政の立場から中小企業におけるIT化の遅れに対する危機感を表明。交付申請の三次公募中(11月19日まで)であるIT導入補助金や、スマートSMEサポーター制度など経産省の施策の積極的な活用を広く促していきたいとの意向を示した。その上で、データを利活用した新しいビジネスモデルによって、中小企業が多い地方の産業界を活性化してほしいと参加者に呼びかけた。
 
経済産業省東北経済産業局地域経済部情報政策室室長補佐の後藤英之氏

 基調講演には、IT産業ジャーナリストで、一般社団法ITビジネス研究会の代表理事を務める田中克己氏が登壇。「The Digital is dead? 既存ビジネスは破壊されるのか」をテーマに、現在のエンタープライズIT市場の一大トレンドとなったデジタルトランスフォーメーション(DX)の実態と課題、中小ベンダーにとってのビジネスチャンスを解説した。田中氏は、「デジタル化がほとんど流行語のようになっているが、見方によっては、われわれは20年以上前からデジタル化に取り組んできたともいえる。ただし、うまく行っている事例はわれわれが思っているほど多くない」と指摘した。その大きな原因の一つが企業文化が保守的であることだとして、企業風土の変革がデジタル変革の波に乗るためには特に重要だと強調。DXが実態としてはまだほとんど起きていないからこそ、「組織が小さく経営者のトップダウンで変革がしやすい中堅中小企業がDXのリーダー企業に成長する可能性もある」と力を込めた。
 
IT産業ジャーナリスト、一般社団法ITビジネス研究会代表理事の田中克己氏

 各セッションでは、市場で注目を集める製品・サービスのベンダーが自社製品のメリットやパートナー戦略を説明した。

 セッション1では、アスプローバ アライアンス営業部の周翊氏が「スマートファクトリ化で需要増 生産スケジューラ『Asprova APS』」と題して講演した。周氏は同社のビジネスについて「製造業向けに生産スケジューラとしてAsprova APSを提供しており、国内シェア1位を誇る。出荷本数は1984本、海外708本という実績があり、国内シェアは約6割という水準。AI、IoTなどを活用したスマートファクトリの流れを追い風として、近年、さらに成長している」と説明。一方で、好調であるが故に、導入支援における慢性的なリソース不足が課題になっているため、新しいビジネスパートナーを広く募集しているという。Asprova APSの特徴としては、「豊富なスケジューリングロジック、便利なユーザーインターフェース、柔軟な外部インターフェースが特に評価されている」として、ユーザーにとっての利便性はもちろん、パートナーにとってのインテグレーションビジネスを成長させるポテンシャルが大きいことをアピール。「パートナーにとって大きなビジネスチャンスが見込める商材である」と強調した。
 
アスプローバ アライアンス営業部の周翊氏

 セッション2では、バリオセキュア営業本部の篠原永年氏が、「中小規模企業様向けに特化したUTMセキュリティ対策とSIer様と協業するパートナープログラムのご紹介」と題してプレゼンした。同社は、2001年の創業以来、自社開発のUTM製品販売とUTM運用管理サービスの両方を手掛けている。篠原氏はまず市場のポテンシャルについて、「UTMのニーズは飽和状態と思われがちだが、調査会社のレポートを見ても、特に中堅中小企業向け市場の伸びは大きい」と説明。同社のUTM製品ラインアップは中小企業向けに特化した製品がメインであり、特徴については「経済産業省のサイバーセキュリティ経営ガイドラインVer.2.0で指摘されているように、中小企業であっても、リスク対応策として防御・検知・分析の仕組みをつくることや、アクセスログ、通信ログなどからサイバー攻撃を監視・検知する仕組みを構築することが求められている。当社製品はこれをオールインワンで実現する」と解説した。また篠原氏は、「UTM販売だけでなく、当社の運用サービスのインフラを活用していただき、運用管理サービスまで網羅したビジネスをパートナーに展開していただくこともでき、柔軟なアライアンスを組むことができるのも強み」とした。
 
バリオセキュア営業本部の篠原永年氏

 セッション3では、ピツニーボウズジャパン SMBソリューションディレクターの堀内朗氏が「バックオフィスの働き方改革を実現する郵便発送業務効率化ソリューション」をテーマに講演した。堀内氏はまず、近年のトレンドといえる「働き方改革」について、まだまだ課題があると指摘。「特に間接部門や営業事務などの現場では、本来業務ではない、多種多様な文書の発送業務に2割くらいの時間を費やしていて、働き方改革が進んでいない。また、発送関連の業務は手作業が多く、誤封入、誤発送が起こる可能性は低くない。機密情報を扱うような企業にとっては、事業上の大きなリスクになり得る」として、郵便発送業務を機械化、自動化することで大きなメリットが得られると説明した。堀内氏はそのためのソリューションとして、発送書類の「紙折り」「封入」「封かん」を自動処理することができる同社の「インサーター(封入封かん機)」を紹介。発送先ごとに枚数が異なるケースや複数のシステムから発送書類が出力される場合も対応が可能だという。また、「各種業務システムとの連携もスムーズで、ITベンダーにとってはクロスセル提案がしやすい商材」だとして、積極的に新しいパートナーを開拓していく意向を示した。
 
ピツニーボウズジャパン SMBソリューションディレクターの堀内朗氏

 セッション4では、「旅費/経費精算・ワークフローソリューション『WAVE225』が経営課題解決に大きく貢献」と題して、NTTデータ ウェーブ ICTソリューション事業部アプリケーションサービス部課長の竹内剛氏が講演した。竹内氏は、「業務改革を進める上で最重要課題として管理間接プロセスを見直すべきと考えているお客様が多い。特に経費精算や稟議申請はオペレーションをもっと効率化しなければならないという課題が顕著で、一方、お客様にとっては一番手を付けやすい課題でもある」と話し、旅費・経費精算と稟議の二つの機能をラインアップしている同社のWAVE225がまさにそうしたニーズに応える製品であることをアピールした。製品の特徴として、旅費・経費精算では顧客ごとに業務・運用ルールを柔軟にカスタマイズできるほか、稟議についてもノンプログラミングで稟議書フォームを自由に設定できるという。さらにシステム基盤として「intra-mart」を採用しており、「拡張性が高く他の業務システムとも容易に連携できる」とメリットを強調した。また、中堅中小企業をターゲットとしたSaaS型WAVE225を今年中にリリースする予定であるとし、パートナーによる間接販売を前提にビジネスを拡大していく意向を示した。
 
NTTデータ ウェーブ ICTソリューション事業部アプリケーションサービス部課長の竹内剛氏

 セッション5では、エーティーワークス 事業統括本部プロダクト営業部営業推進課の小野寺雅人氏が「国産ハードウェアメーカーが提供するアプライアンス事業戦略」をテーマにプレゼンした。同社は富山県に本拠を置く国産ハードウェアメーカーで、1/4Uサイズの省スペース省電力サーバー「Rad Beagle」シリーズをはじめ、サーバーや各種アプライアンス製品の製造・販売を手掛ける。近年、SIerや事務機ディーラー、ISVなどが、自社が取り扱うソフトウェアとエーティーワークス製ハードウェアを組み合わせてオリジナルのアプライアンス製品を作る動きが拡大しているという。小野寺氏はオリジナルのアプライアンス製品を作るメリットについて、「ハードウェアだけであれば価格や性能で差別化するのは難しくなってきているが、オリジナル製品であれば営業や技術力に依存することなく他社製品との差別化ができ、安易な価格競争にも巻き込まれない。結果的に、新規顧客、新規販路の獲得や、売り上げ、利益の向上にもつながりやすい」と解説。また、オンプレミスのビジネスだけでなく、さまざまなクラウドサービスと連携したアプライアンス製品に仕上げることも可能だ。小野寺氏は、エーティーワークスがOEM、ODMでそうしたビジネスに踏み出したいITベンダーをサポートしていることを説明した。
 
エーティーワークス 事業統括本部プロダクト営業部営業推進課の小野寺雅人氏

 セッション6では、キングソフト WPS事業部ビジネスパートナーDiv.ディレクター代行の高橋満氏が「コスト削減のカギは、オフィスソフト選定にあり! ~定番からの脱却で見える化する『課題』と『解決策』~」と題して講演した。「Microsoft office」の互換ソフト「KINGSOFT Office」を開発・販売してきた同社は、2016年にKINGSOFT Officeを「WPS Office」にリブランドした。高橋氏はWPS Officeの特徴について、「操作性、UI、保存形式などあらゆる面でMicrosoft officeと非常に高い互換性をもち、マルチデバイス対応など働き方改革への要請にも応えて使い勝手を継続的に改善している。VBA対応も、Microsoft Officeと同一のAPIを採用し、導入に向けた改修支援もある」と説明。Microsoft Officeの既存ユーザーがWPS Officeに乗り換える場合、コストは3年で3分の1程度に抑えられる一方で、ほぼ同一のユーザビリティーが確保され、ストレスなく導入が可能であるという。北海道・東北エリアでの実績は、「一般企業や自治体はもちろん、文教市場で特に多くの実績がある」という。高橋氏は、「Windows 7とoffice 2010のサポート終了、そして当社が強みを持つ文教市場で教育指導要領の改正が行われる20年に向けて、販売店にもさらに大きなビジネスチャンスが見込まれる」とアピールした。
 
キングソフト WPS事業部ビジネスパートナーDiv.ディレクター代行の高橋満氏

 主催者講演では、週刊BCN編集長の本多和幸が、エンタープライズITビジネスの技術トレンドやビジネストレンドなどについて取材情報を基に解説した。