【米サンフランシスコ発】米オラクルは10月22日から25日までの4日間、サンフランシスコで年次プライベートイベント「Oracle Open World 2018」を開催した。パートナーやユーザーを中心に、175カ国から約6万人が参加。2300以上のセッションを用意し、オラクルのビジョンや最新製品・技術、先進事例などの情報を共有した。近年、クラウドビジネスに注力し、AWSへの対抗姿勢を鮮明にしている同社だが、エンタープライズITのニーズを満たす信頼性やセキュリティーを強みとして前面に押し出し、競争力を高めたい考えだ。(取材・文/本多和幸)
セキュリティーと信頼性で“違い”を出す
「Gen 2 Cloud」のビジョンを発表
米オラクル創業者であるラリー・エリソン会長兼CTOは、ここ数年のOracle Open World(OOW)の例に倣い、初日の22日、3日目の24日の2回の基調講演に登壇した。現在のオラクルが何にフォーカスしているのか端的に示されるこのプログラムは常に満員。来場者の注目を集めた。
ラリー・エリソン
会長兼CTO
メインイベントともいえる初回の22日の講演でエリソン会長が語ったのは、後発のクラウド市場で勝機を見出すための次世代Oracle Cloud「Oracle Gen 2 Cloud」のビジョンだ。エンタープライズITのミッションクリティカルなワークロード向けにはセキュリティーと信頼性の面で既存のクラウドは不十分であり、オラクルがGen 2 Cloudでその状況を打破するというメッセージを強く打ち出した。
Gen 2 Cloudとは具体的にどのようなものなのか。エリソン会長によれば、Gen 2 Cloudの差別化ポイントとなる主な二つの要素が、新アーキテクチャーによるIaaSの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」と、昨年のOOWで大々的に発表した「Oracle Autonomous Database」(データウェアハウス向けの「Autonomous Data Warehouse」とトランザクション処理向けの「Autonomous Transaction Processing」をリリース済み)だという。Gen 2 Cloud仕様のOCIは、現在、北米と欧州の一部のリージョンでしか提供されておらず、同社が詳細について公に発表したのは今回のOOW 2018が初めてだ。
2019年中に東京、大阪 2カ所のDCが稼働予定
エリソン会長はGen 2 Cloud仕様のOCIと従来のIaaSの違いについて、次のように説明した。「ほとんどのクラウドは10年前のアーキテクチャーで構成されている。複数のユーザーのクラウド環境はもちろん、それを管理・制御するクラウドサービスベンダー側のコード(Cloud Control Code)も同じコンピューターの中に存在している。これでは(理論上)悪意を持ったユーザーが同じコンピューター上のほかのユーザーのデータを盗んでしまう可能性を排除できない。OCIはユーザーが利用できるクラウド環境とCloud Control Codeを物理的に違うマシンに分離している」。
Gen 2 Cloudでは、このOCI上でAutonomous Databaseのクラウドサービスも提供することになる。Autonomous Databaseは、稼働しながらセキュリティーの脅威の検知や排除をまさに自律的に行い、システムを止めることなくセキュアに運用できるという。エリソン会長は、Gen 2 Cloudにより、ユーザーにとっては従来のクラウドのセキュリティーと可用性、信頼性への懸念が払しょくされ、オンプレミスの既存ワークロードのクラウド移行をさらに推進できるとの見解を示した。また、エリソン会長は恒例となったAWSとの性能比較のデモも自ら行い、「AWSより安く、速く、セキュア」だと繰り返し強調した。
クレイ・マグワイク
OCIソフトウェア開発担当SVP
翌23日には、IaaS製品に関する基調講演に登壇したクレイ・マグワイク・OCIソフトウェア開発担当シニアバイスプレジデント(SVP)が、Gen 2 Cloud提供リージョンの拡張計画に言及した。マグワイクSVPは、「19年末までにGen 2 Cloud提供リージョンをオーストラリア、カナダ、日本、韓国、インド、ブラジル、中東に拡張するほか、欧州での提供地域も拡大する」と発表。また、19年中に“ハードウェア設置型”のクラウドサービスである「Cloud at Customer」のGen 2 Cloud対応も進める。
【米サンフランシスコ発】米オラクルは10月22日から25日までの4日間、サンフランシスコで年次プライベートイベント「Oracle Open World 2018」を開催した。パートナーやユーザーを中心に、175カ国から約6万人が参加。2300以上のセッションを用意し、オラクルのビジョンや最新製品・技術、先進事例などの情報を共有した。近年、クラウドビジネスに注力し、AWSへの対抗姿勢を鮮明にしている同社だが、エンタープライズITのニーズを満たす信頼性やセキュリティーを強みとして前面に押し出し、競争力を高めたい考えだ。(取材・文/本多和幸)