「デジタルマーケティングソリューションを売りながら、自社はデジタルマーケティングができていない。マーケティングツールを売っているのに竹槍でクロージングしてくる。彼ら自身が体現していないから買わなかったという話をよく聞く」。そう話すのは、2BCの御手洗友昭・代表取締役社長だ。ICT企業の法人向けセールスやマーケティングを支援する頭脳集団を率いる。買い手が劇的に変わる中、売り手も変わらなければならいと話す御手洗社長に、ICT企業が目指すべき「売り方改革」について聞いた。

ICT企業の法人向けセールスやマーケティングを支援する頭脳集団、
2BCを率いる御手洗友昭・代表取締役社長

 「キャリアをHPでスタートしてリクルート、セールスフォースと、ずっとITの営業畑を歩いてきた。HPではトヨタを担当。情報システム部(情シス)のサーバールームのシマ争いをしながら、クロージングは夜の錦というパターンの営業スタイルだった」と、御手洗社長は振り返る。いわゆる営業引き合いベースの「竹槍クロージング」を多用する販売スタイルが全盛だった頃だ。しかし「買い手側が変わってきたと強烈に感じるようになり、2014年の2BC設立メンバーとして参画することにした」と話す。

 14年といえば、時あたかもマルケトが日本に上陸し、マーケティングオートメーション(MA)元年とも言われた年だ。MAというと、今でこそある程度の理解が得られるようになったが、当時はセールスフォースの人間ですらほぼ知らなかった時代。しかし買い手は確実に変化しつつあった。「例えば、20代後半から30代前半の人たちは、いきなり営業を呼ぶことはしない。これまでと選び方が全く違う。6-7割はウェブで完結し、人間的なつきあいでの販売は、これから激減するだろう」と、変化の行方を見据える。「買われ方の変化につれては、マーケットががらっと変わっていくことは明確。その時代でしっかりとビジネスを継続できる力をつけていこうということ。買い手が変わっているから必ず売り方は変えないといけない――これがわれわれのメッセージ」と話す。

 とはいえ、現状はまだまだこれまでの販売スタイルを引きずっている。売り上げの中身を因数分解したとき、9割が営業引き合いであれば無理もない。御手洗社長は「NEC、富士通、KDDIであっても、売り上げの9割は、まだ営業が作っている状態ではないか。しかし、このまま何も変えずに突き進むと、必ず急激に需要が落ち込むときがやってくる。25年あたりまでは何とかなるかもしれない。ただ30年までは持たないだろう」と見る。猶予は10年。ここで新しい買い手にふさわしい販売システムを作り上げる必要があるというわけだ。
 
2BCが顧客に提唱するビジネス改革のステップ

 そのためには「セリングチームを作る必要がある」という。営業とマーケティングの統合チームだ。2BCの社是は「成果は売り上げ」。セリングチームでも、売り上げに貢献するマーケティングの取り組みや、営業の意識改革を進めながら、収益チームとして、営業とマーケが二人三脚で適切な数値指標を追いかける仕組みが必要だと説く。

 「限られたリソースを使って、自分たちはどんなマーケットで誰に、どんなビジネスを提供しているんだろう、ということをしっかり定めるところからスタートする」

 購買関与者の誰がどのように動いて、どんなプロセスを踏んで購買に結びつくかを子細に分析し、数値指標で管理していく。「販売のパターンは山のようにある。顧客の業種、業態、商材、購入形態などで買われ方は全く違う。それを抽象化して大別。3から4パターンに収れんさせていく。この課程でコミュニケーションプランの方針地図ができる。ターゲット企業の誰に対してどんなチャネルで何をやっていくかが決まる――。そんなスタイルの販売方法だ。

 新しい販売スタイルを確立するためにはデジタル武装は必須。しかし、いきなりツール導入から入るようなことはしない。「そもそもターゲットが100社しかなければ、全件営業に行ったほうが早い。ウェブだけで完結する商材なら、インサイドセールスは要らない。しかし、これならテクノロジーが生かせるという勘所がつかめたら、ツールの選定に入る」というステップを踏む。「ベンダーの紹介でどうしても売りたい商材があると言われても、マッチしない場合は、商談をつぶすこともある」ほどだ。
 

 御手洗社長は「ビジョンセリング」と言う言葉で、新しい営業に求められる機能を表現する。プレゼンの相手は情シスではなく経営者。顧客の課題をつくりに行く、という考え方だ。「直視して引いてみる、というスタンス。顧客のブランディングをごっそり書き換えるくらいの提案。いわば営業3.0のようなところを目指さなければならない。プチコンサルティングが必要」なのだ。

 DXに関しては「サイエンスがないDXごっこ」に終始している例が多いと手厳しい。デジタルで変化を起こすだけがDXではないとして「1段階目は効率を上げる。次は会社のコアコンピタンス強化をデジタル化で進める。ここまではまだ準備の段階。最も必要なのがその次の第3段階。新たな価値を創造するデジタル化こそDXの本質だ」と話す。単に予算措置のないDX推進部を立ち上げるだけでは意味が無い。「KDDIの役員ですら、5年で会社が無くなるという切迫した危機感がある。そこまでいくとサイエンスが生まれ、DXが動き出す」という。

 「マーケティングDNA、セールスDNAとよくいわれるが、クラウドインテグレーターやSIerにそれが備わっている人がいないと強烈に感じる」。機械に任せるところは機械に任せ、本来人間が関わらなければならない仕事を重視する。テクノロジーを生かして、ビジネス価値を実現するアプローチができる人材を育て、顧客に価値を提供できる企業に生まれ変わることが求められている。30年と言ってもあっという間。25年までは、何とか営業引き合いベースを引きずって何とかなる。しかし30年には「社用族」は消え、ゴルフ場も、銀座、六本木の景気も悪くなるかもしれない。そのときに生き残っているためには今、「売り方改革」に取り組む必要がある。(BCN・道越一郎)