理経(猪坂哲社長)は3月19日、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター、東京理科大学、横浜市消防局と、産学官連携によるVR(バーチャルリアリティ)システムの共同研究開発について契約したと発表した。実火災に近い状態で燃焼データを収集するため、ニッタン(板倉秀樹社長)の技術支援を受け、東京理科大学火災科学研究所実験棟で4回の燃焼実験を行った。測定したデータをVRに移行してシステムを開発するのは国内初となる。

熱分布測定のイメージ

 今回の共同研究開発では、消防隊員の教育訓練に特化したVR消防教育訓練シミュレーションシステム(VR消防教育訓練システム)を構築し、20年度中の完成を目指す。共同研究開発の体制としては、「VR研究・開発」を東京大学バーチャルリアリティ教育研究センターの廣瀬通孝教授、雨宮智浩准教授、青山一真助教が担当。「火災燃焼研究」を東京理科大学理工学部建築学科の大宮喜文教授が担当。「教育訓練研究・検証」を横浜市消防局消防訓練センター管理・研究課が担当。「VR製品開発」を理経が担当する。

 VR消防教育訓練システムの開発にあたっては、建物室内を実際に燃焼させて火災を再現し、温度を基軸とした熱の分布、煙の移動、火炎の挙動などを測定する。これにより、時間経過とともに推移していく火災現象を正確に捉えながら、消火活動との相互作用も含めて再現していく。
 
VR訓練のイメージ

 また、実災害で消防隊はチームで行動するため、それぞれの隊員の視点を維持しながらチーム単位で活動できるようシステムを構築する。VR空間内で複数人の活動したデータを記録しておくことで、訓練実施後に反省点を確認することや経験値の高いベテラン隊員の行動を追体験することが可能となる。

 火災現場での消防隊の活動では、人間の感覚器官からの情報も重要になってくる。そこで、実際にどのような感覚情報を基に判断し行動しているのかなど、感覚再現デバイス(実際と同様な感覚を得ることができる装置)を用いてシミュレーションしていく。感覚情報を通して得られる状況判断のコツや非言語的なノウハウを抽出していき、心理的・医学的観点からの影響についても研究する。

 理経では、燃焼実験で得た詳細な測定データを基に、VR開発環境として「Unreal Engine」を使用し、温度を基軸とした熱の分布、煙の移動、火炎の挙動をリアルタイムに可視化できる技術開発に注力する。

 今後は、この開発成果を基に、多様な現場環境を再現していく。また、ハプティクスなど最先端の要素も取り込みながら、産学官のさらなる連携により受傷事故や殉職者の減少につながる技術開発・社会実装を行っていく。