大日本印刷(DNP、北島義斉社長)は5月7日、物流用の自動搬送ロボットなどの動きを高精度に制御するために、画像処理ソフトとカメラを活用し、角度±1度以下の精度でセンシングできるマーカ「DXマーカ」を開発したと発表した。

厚さ0.7mm、外形が1辺40mmと80mmのガラス基板製「DXマーカ」をカメラと専用ソフトで読み取る

 従来、フォークリフト運転者が荷物をトラックに積み込む際には、荷物の重さや大きさ、傾きなど、作業環境の細かい条件に合わせて、フォークリフトの爪(フォーク)の角度を±1度以下の範囲で微調整していた。自動搬送ロボットは、荷物に貼付されたマーカをロボットが読み取り、荷物の位置を認識したり、倉庫内の柱などのマーカを読み取り、自身のいる場所を確認したりしている。しかし、既存の紙製のマーカでは、紙の収縮、印刷の凹凸や位置精度の低さにより、搬送ロボットが荷物の傾きなどに合わせてフォークリフトの爪の微調整を行うことが困難で、また汚損が生じやすいという課題があった。そのため、高精度で耐久性があり、安価なマーカが求められていた。

 高精度なマーカは、産業技術総合研究所(産総研)が開発しており、宇宙空間での人工衛星の挙動計測にも使われ、またGPSの使えない場所でも誤差10cm未満の測位を可能にしている。今回DNPは、その位置検出精度を維持しつつ、産総研技術移転ベンチャーであるリーグソリューションズ(大森能成社長)による新たなデザインに基づき、課題であった安価なDXマーカを開発した。DXマーカでは、DNPが長年培ってきた高精密な印刷技術の一つで液晶ディスプレイのカラーフィルタでも実績のあるフォトリソグラフィ技術を活用して、ガラス基板上に±数μ(10-6)mの精度でパターニングしている。

 DXマーカは、厚さ0.7mm、外形が1辺40mmと80mmのガラス基板で、パレットや倉庫の棚、建物のドアやコーナーの柱、離発着地点など位置を特定したい場所や自動搬送機器、ロボット、ドローンなど無人移動体に装着し、建物や無人移動体の本体に装着されたカメラでマーカを読み取って位置を高精度に位置を検出することができる。また、このマーカには、マーカを装着した場所や無人移動体を特定できるIDデータも一緒に埋め込まれており、これらの情報は、カメラ1台と専用ソフトウェアで読み取ることが可能なため、低コストでモノの動きをデータ化し、管理・解析することが可能となる。

 今後DNPは、物流機器メーカーと協業してDXマーカを使った自動搬送システムの検証を実施する。また、自動搬送を安価なシステムで運用したい物流・製造施設、医療・介護、農業や測量に使われる自動搬送機器、ロボット、ドローンなど無人移動体向けに、さまざまな企業へDXマーカを提供し、25年度に年間10億円の売り上げを目指す。

 さらに、印刷技術と情報処理の強みを生かし、「透明アンテナフィルム」や放熱部品「ベーパーチャンバー」などの5G向け電子部品と、IoTの情報セキュリティを高めるプラットフォームなどを掛け合わせて、5Gが実現する快適な情報社会を支えるソリューションを提供する。「スマートファクトリー」に向けては、今回開発したDXマーカや、5Gのネットワークを独自に構築できる「ローカル5G」に対応したSIM(加入者識別用モジュール)カードなどを提供していく。