国産ERPを開発・提供するGRANDIT(石倉努社長)は、中小企業向けクラウドERP「GRANDIT miraimil」を今年10月にリリースする。同社は、中堅から準大手企業をメインターゲットとして国産ERPパッケージを開発・提供してきたが、その実績とノウハウを生かして新たな市場を開拓する。まずは、商社・卸売業とサービス業に特化した2種類のサービスをラインアップする。今年中に10社、リリース後3年間で200社のユーザー企業獲得を目指す。
GRANDITの石倉努社長
GRANDITは、帝人グループのSIerであるインフォコムの子会社。2003年、商社系ITベンダーが中核となって日本の商慣習に合った純国産ERP「GRANDIT」を開発・提供すべくコンソーシアムを立ち上げた際に、同事業の推進母体として発足した。製造業、サービス業、商社・卸業を中心に1200社以上で導入実績があるという。
同社は今回、新たにmiraimilをリリースする背景について「『2025年の崖』などが取沙汰される中で、DXの進捗状況は企業規模によって格差が大きくなってきており、IT人材が不足している中小企業の取り組みの遅れは深刻。新型コロナ禍への対応でその格差は拡大している」(石倉社長)と指摘。中小企業のDX推進と成長を支援することで、新たな成長市場を開拓したい意向だ。
miraimilは、共通マスターデータをもとに、会計、人事、生産、物流、販売のフローを一元管理できることが特徴だという。ERP本来のコンセプトをしっかり踏襲していることをアピールポイントとしている。導入時は、10種類の基幹業務モジュールから必要なものを自由に組み合わせる。承認ワークフロー機能やBI機能は標準搭載する。石倉社長は、「中小企業向けのクラウド型会計システムや人事給与システムは世の中に既にたくさんあるが、中小企業向けの統合型ERPと言える製品はmiraimilが初めてではないか」と力を込める。
まずは、商社・卸売業とサービス業向けの特化した2種類のサービスを提供する。中堅・準大手企業向けのGRANDITの従来製品が得意としてきた業種であり、機能的にもコスト的にも競争力の高いサービスを提供できると判断した。商社・卸売業で商社特有の取引業務や国内外の取引先に応じた多通貨取引への対応などの機能を実装、サービス業向けでサービス業特有の期間契約取引や多様な請求形態に対応する。
miraimilのクラウドインフラには「Microsoft Azure」を採用し、顧客ごとに占有環境を用意する。最短3カ月で導入可能で、従来のオンプレミス型GRANDITと比べて平均80%の導入コスト削減効果が見込めるという。また、GRANDITの専任スタッフが運用保守・監視支援にあたるため、ユーザー企業のIT担当者の業務負荷軽減に寄与できるとしている。
事業目標については、サービスリリース後3年目にあたる24年時点で200社、5年目の26年に500社のユーザー獲得を目指す。販路については、「従来のGRANDITパートナーにも中小企業向けのビジネスを拡大したいパートナーは少なくない」(石倉社長)として、既存パートナーによる拡販が主軸になることを示唆する。一方で、中小企業向けの基幹業務システムの提案をメインビジネスとする新たなパートナーの募集も始めており、miraimilの発表を機に、パートナーエコシステムの規模そのものを拡大する意向も示した。(本多和幸)