マネーフォワードは8月24日、中堅・大企業向けの新サービスとして、請求書受領システム「マネーフォワード クラウドインボイス」の提供を始めた。受領した請求書のデータ化にグループ会社のノウハウを活用しているのが特徴で、コストメリットを他社製品との差別化要素として挙げる。改正電子帳簿保存法に対応するほか、来年10月からのインボイス制度を見据えたプロダクトと位置づけており、機能拡充を進めて各企業のデジタル化を支援する。
(齋藤秀平)
クラウドインボイスは、取引先から送られてきた請求書を受領し、データ化できるサービス。リリース時点では郵送による紙の請求書に対応しており、メール添付やアップロードによる受領にも順次対応する。
山田一也 執行役員
紙の請求書のデータ化では、自動記帳サービス「STREAMED」を提供するグループ会社のクラビスが培ってきたAI-OCRとオペレーターによる入力を生かしており、これが他社製品に比べて割安で導入できる要因になるとしている。
同社の中堅企業向け請求書関連サービスでは、債権請求管理業務向けの「クラウド請求書Plus」と債務支払管理業務向けの「クラウド債務支払」によって請求書の作成と確認はできる。しかし、取引先のシステムと連携して請求書を送付したり、受領したりできるサービスはなく、そこを埋めるためにクラウドインボイスを開発した。
企業は現在、紙やPDFなど、さまざまな形式で取引先から請求書を受け取っている。同日の発表会で執行役員の山田一也・マネーフォワードビジネスカンパニーCSOは、インボイス制度開始後、企業が受け取る請求書はさらに多様化するとの見通しを示し、まずは「受領に特化したサービス」としてクラウドインボイスを提供すると説明した。送付の機能については「今後、開発する予定」と述べた。
外部公開用のAPIを用意しているため、既存システムとの連携が可能。山田執行役員は、大企業に関しては、導入済みの自社開発システムやERP、ワークフローシステムなどの周辺領域の機能としての利用を想定しているとし、「より幅広いお客様に使っていただけるサービスになっている」と話した。
機能拡充の方向性も示した。具体的には、インボイスを発行する業者が国税庁に登録されているかをチェックする機能や、請求書の回収状況を可視化できる機能、請求書データをCSVやAPIで出力できる機能などをインボイス制度開始までにリリースする予定とした。
インボイス制度を巡っては、電子インボイス(デジタルインボイス)の国際的な標準仕様「Peppol(ペポル)」のネットワークを使ったやり取りの普及に向けて、デジタル庁や同社などが参画するデジタルインボイス推進協議会(代表幹事法人・弥生)が活動している。
企業がペポルのネットワークに接続する場合、中継点となる「アクセスポイント」を持つか、アクセスポイントサービスを提供するデジタル庁認定の「アクセスポイントプロバイダー」(8月12日時点で、国内の認定プロバイダーはTKCとファーストアカウンティングの2社)と契約する必要がある。
山田執行役員は「日本全体の生産性を向上させるためには、インボイス制度を契機に、請求書の業務をデジタル化していかなければならないが、請求書のフォーマットがばらばらになっていることが弊害の一つになっている」と指摘。自ら認定プロバイダーとなり、アクセスポイントサービスを提供しながらフォーマットの統一を目指すと表明した。認定を受けるには数カ月かかる見込みという。