来年10月に始まるインボイス制度に向け、マネーフォワードが関連のビジネスを強化している。バックオフィス向けSaaS「マネーフォワードクラウド」の機能拡張を進めているほか、新サービスのリリースも計画中だ。インボイス制度開始後は、紙と電子データの混在が問題になるとみており、今後はそこに焦点を当てながら需要の取り込みを進める。
山田一也 執行役員
同社の山田一也・執行役員マネーフォワードビジネスカンパニーCSOは「インボイス制度関連の問い合わせは最近、少しずつ増えており、イベントの参加者は通常のイベントよりも2倍くらい多くなっている」とし、「業務のデジタル化に向けた各企業の意識は確実に高まっている」と話す。
市場が立ち上がりつつある中、同社は4月、第1弾として、マネーフォワードクラウドで「証憑自動取得機能」の提供を開始した。ECサイトで発行される領収書や請求書の電子データについて、サイトからの取得やクラウド型会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」への取り込みを自動化できるのが特徴で、ユーザーは追加料金なしで利用できる。
機能を支えているのは、金融領域で培った「アカウントアグリゲーション技術」だ。同社は、この独自技術を差別化要素として、既に第2弾、第3弾のリリースに向けて準備を進めている。
インボイス制度によって企業の間では、将来的に紙の請求書から電子インボイスへの切り替えが進むとみられている。しかし、同社は、多くの企業が一足飛びに対応するのは難しく、紙と電子データが混在する世の中になると想定している。
山田執行役員は「紙と電子データの混在が問題になると認識している企業は、まだごくわずか」と指摘し、「紙と電子データの混在をなくし、電子的に一元管理することに徹底的にフォーカスしていく」と語る。また、インボイス制度関連の取り組みを通じて蓄積したデータを活用し、力を入れている「SaaS×フィンテック」の新サービスも視野に入れていると説明する。
(齋藤秀平)