ITインフラストラクチャー構築や運用サービスを提供するキンドリルジャパンは11月29日、事業戦略説明会を開催した。米Kyndrylは2021年に米IBMのグローバル・ビジネス・サービス部門がスピンオフして設立。日本法人は同年9月に事業を開始した。会見で上坂貴志社長が現在の事業状況や戦略的アライアンスによるエコシステム形成の進捗、今後のビジネス戦略を説明。今年9月から提供を開始しているインフラ運用を機械化するデジタル統合プラットフォーム「Kyndryl Bridge」を軸に「ITインフラの真のデジタル化を実現する」方針を示した。
(大蔵大輔)
Kyndryl Bridgeは同社の運用知見をAIや自動化アセットとして実装したデジタル統合プラットフォーム。ハイブリッド・マルチクラウドで複雑化するIT資源を見える化し、障害回復時間の短縮や未然防止、自動復旧などを実現する。
上坂貴志 社長
従来手作業で行っていた業務をデジタル化することによって、IT部門の人材をより付加価値の高い仕事にシフトさせる効果も期待する。既存のシステムやソリューションを入れ替えることなく利用できるのも特徴だ。パイロットアカウントでリリース前に使用したユーザーからは「イベント、アラート、セキュリティインシデントの40%が自動的に解決した」「部門コストを統合・分配・検証するリードタイムが85%削減できた」などの評価を得たという。
上坂社長は事業開始から1年を振り返り、「設立時にパーパスとして掲げた『The Heart of Progress(社会成長の生命線)』を実現すべく事業を進めてきた。日本のDXが遅れていると言われる中で、お客様と議論を重ね、納得できる一歩踏み込んだインフラ環境構築ができたのではないか」とコメント。ただ、状況は一様ではなく「今すぐにインフラをアーキテクチャーから変更してクラウドにシフトしていこう」という顧客もあれば、「現状のアーキテクチャーは維持しつつ、次のアーキテクチャーの準備を進める」顧客もある。異なるニーズに応えていくために「現状の安心・安定・安全なインフラ運用を支えながら、刷新に向かっていかなければならない」と語った。
現在、同社では六つの技術領域でサービスを提供している。その中で引き合いが多かったのは「クラウド」だったが、成長領域として挙げたのは「デジタルワークプレース」と「アプリケーションデータ&AI」。前者についてはリモート開発やリモートワークが進み、シンクライアントをより展開したり、リモート環境における問い合わせ先としてヘルプデスクやサポートデスクを設置したりといった要望が増え、案件数が伸びた。後者については、A&IS(アドバイザリー&実装サービス、ITインフラ運用におけるトランスフォーメーションの提案)が成長の推進力となった。DXとCXがインフラにも展開されるようになり、運用サービスの提供から共創型ビジネスへのシフトが加速した。
今後の戦略としては、ミッションクリティカルなシステムのモダナイズ、顧客の自由度を高めるアライアンス構築、実証実験環境の提供などを推し進めていく考えだ。
上坂社長は「共創でグローバルの競争力を高め、ミッションクリティカルに携わっている人材と次世代のインフラを作っていく」と顧客との関係性を重視。インフラ環境の変革を支援するKyndryl Bridgeのほか、デザイン主導の共同開発によって実証実験の場を提供する「Kyndryl vital」、成果主導のコンサルティングによって次世代インフラの構想を提案していく「Kyndryl consult」を軸に、さらなる事業の拡大を図るとした。