日本IBMは3月6日、中外製薬と共同で構築した製薬工場向けのデジタル基盤「IBM Life Science Smart Factory Asset」を外販すると発表した。作業計画の作成や人員配置を自動化し、業務の効率化につなげることが可能で、日本IBMは製薬業界のデファクトスタンダードを目指し、導入を推進していくとした。
この基盤は、中外製薬の浮間工場(東京都)のオペレーション改善に向けて開発。1月から本格的な運用を開始している。設備情報や製法情報、作業工数などをデータ化し、それをもとに工場全体の作業計画を自動的に立案することで、業務を効率化できる点に特徴がある。作業員ごとの保有資格情報や育成プランと連動させ、従業員の配置計画を自動化。従業員はスマートフォンから予定や作業の進捗確認、実績の入力を行うことで、業務を可視化する。そのほか、リモートワーク支援が組み込まれており、リモートワーカーへの報告や指示のほか、写真によるエビデンスを改ざんできない状態で共有でき、査察などに活用できる。
中外製薬工業
上野誠二 部長
中外製薬の子会社、中外製薬工業の上野誠二・生産技術研究部長は「医薬品の製造では、すべての生産プロセスが厳格なルールに基づき管理・実行されており、従業員は業務ごとにスキル・資格を有していることが求められる。業務分担の作成には、そうした人に基づく情報が重要になる」と話し、製薬業務の効率化には、従業員のデータと工場内のデータの連携が不可欠になるとの考えを示した。
日本IBM
中島理絵 サービスパートナー
日本IBMのコンサルティング事業本部の中島理絵・ヘルスケア&ライフサイエンス・サービスパートナーは「製薬業界向けの取り組みはIBMグループとしても初の試み」とした上で、「プロジェクト開始当初からさまざまな製薬会社から注目され、問い合わせを受けている」と紹介。「製薬業界全体に貢献していきたい」と話した。
(大畑直悠)