アマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン(AWSジャパン)は、AWSパートナーに協力する非パートナー企業へのトレーニング提供に乗り出す。IT人材の不足が深刻化する中で「パートナーでもエンドユーザーでもないところに人がいる」(渡邉宗行・パートナーアライアンス統括本部執行役員)ことに着目。パートナーと協業する企業のスキルを強化することで、デリバリー体制の拡充につなげる。渡邉執行役員は、クラウド需要の高まりを受け「育てても育てても人が足りない」状況が続いているとし、クラウド人材の拡大へ「育成支援を最優先に取り組みたい」と強調した。
(藤岡 堯)
渡邉宗行 執行役員
取り組みについては、3月16、17日に開かれたパートナー向けイベント「AWS Partner Summit Japan 2023」の初日の基調講演で紹介された。
AWSジャパンは人材育成専門チームを通じ、パートナーの実情、ニーズに応じてカスタマイズしたトレーニングを提供しているほか、オンライン学習コンテンツの「Skill Builder」なども展開し、パートナーの底上げに力を入れている。
昨年には「人材サービス型AWSパートナー」の制度を新設。一般のエンジニア市場からAWSの技術を有する人材を育て、案件単位でAWSパートナーへ提供するIT人材サービス企業を支援する試みで、AWSジャパン側による基礎教育に、パートナー側のOJTも加え、連携して人手不足の解消に当たっている。
ただ、これらの取り組みを加速させても、新型コロナ禍などに起因するDXの伸長やそれに伴う旺盛なクラウド需要を背景に、案件数に対して人が足りないとの「悲鳴のような声」(渡邉執行役員)がパートナーから寄せられているという。
さらに人材を増やすため、これまで支援が行き渡っていなかったパートナーの協力会社へのトレーニングに踏み込むことにした。体系立ったトレーニングプログラムを設けることはせず、対象企業が求めるスキルを聞き取り、必要なものを適宜提供していくかたちで進める方針だ。すでにいくつかのパートナーとは、相談が始まっている。
これまでAWSとあまり接点のなかったIT企業にとっては、スキルアップや新たな商機につながることが期待される。将来的には、支援を受けた協力企業がAWSジャパンのパートナーエコシステムに加わる可能性も考えられる。
渡邉執行役員は「パートナーになっていただき、支援ができれば、最終的には現在お付き合いしているパートナーのデリバリーを助け、日本のクラウドを進められる」と話す。さらに「(新たな取り組みは)『絶対的に人がいない中でどうするのか』という問いに対して、われわれが出した答えの一つだ」と力を込め、既存パートナーとの協議を積極的に進める姿勢を示した。
公共向けは「連携を密接に」
基調講演では、大場章弘・執行役員パブリックセクターパートナーアライアンスも壇上に立ち、公共部門パートナープログラム(Public Sector Partner Program、PSP)などについて解説した。大場執行役員は公共向けのクラウドには大きなチャンスがあるとし「皆様のビジネスを広げるためにも、連携を密接なものとしたい」とPSPへの参画を呼びかけた。