大塚商会は7月24日、グループの中・長期経営方針を発表した。顧客企業数の2%増などをKPI(重要業績評価指標)に盛り込んだ。顧客との関係強化や、幅広い商材を提案する「オフィスまるごと」の推進、AIの活用などに力を入れる。大塚裕司社長は、安定的かつ持続的に成長を続ける100年企業を目指すとし「礎をしっかり築き、次に引き継いでいける環境をつくりたい」と述べた。
(齋藤秀平)
大塚裕司 社長
中・長期経営方針では、人材育成などへの投資、情報活用、顧客との関係づくり、オフィスまるごと、業績拡大の成長サイクルを回していくことを基本戦略に掲げた。新型コロナウイルスの感染が広がった2020年から続いた膠着状態を払拭し、経営を再び成長軌道に乗せる狙いがある。
KPIについては、顧客企業数に加え、1企業当たりの売上高を3%増やす▽ROE(自己資本利益率)は13%以上▽営業利益と経常利益の年平均成長率6%、利益率7%──なども掲げた。大塚社長は「あまりびっくりするようなことは書いていない」としつつ、掲げた数字は「最低限」のラインだと強調した。
大塚社長は、20年以降の同社の商談件数や受注率などの推移を初めて公開した。22年の商談件数が336万件、受注率が9.5%だったことを引き合いに出し「受注率が1%上がれば、全体の受注件数は約1割増える。たらればの話だが、数字に対しての影響はまだ夢がある。この辺をどうやって追いかけていくかを中・長期経営方針で狙っている」と話した。顧客に対しては、リアルとWeb、センターの三位一体で対応し、新しい関係性からオフィスまるごとへのシフトを進める考えだ。
受注率を向上させる上で、大塚社長が重要視しているのがAIだ。既に営業へのAI活用を進めているが、活用状況は「まだ5合目までいっていない」と分析し、今後もAIによる生産性の向上にこだわる考えを示した。現在、インド工科大からの人材採用などによって「AI研究室のような取り組みを一部進めている」と紹介した。
製品に関してもAIの実装を進めている。基幹系システム(SMILEシリーズ)と情報系システム(eValueシリーズ)のデータベースを統合し、データのシームレス化を実現した「DX統合パッケージ」に、米dotData(ドットデータ)のAI機能の標準実装を23年2月に発表したことを示した。DX統合パッケージについては「その先」も計画しているが、詳細は「24年2月に発表する」と言及を避けた。
AI活用の次の段階としては「営業が関わらなくても、商材が売れるような仕組みをつくろうとしている」と説明した。具体的には、人を介さない自動的な販売に関する研究などをしているとし、「人手を少なくしても大丈夫な環境に向けて、トライアルでシステム開発をしている。理想が高い分、まだできあがっていないが、着実に進めている」と語った。
100年企業に向けては、盤石な経営基盤を構築したり、変化への対応力を備えたりしながら「100年後も生き生きと活動を行っていける長期持続的なビジネスモデルを築き上げる」との方針を披露した。