ソフトウェア協会(SAJ)は7月26日、中国ソフトウェア産業協会(CSIA)のSAJ訪問を記念した特別講演会を開いた。「中国ソフトウェア市場の発展とチャンス」と題して講演したCSIAの陳宝国・常務副秘書長は「中国では今後10年間で、企業のDXが最も成長の速い分野になる」と述べ、ビジネスチャンスの獲得に向けてSAJの会員らに進出を検討するよう求めた。
講演する陳宝国・常務副秘書長(左)
陳常務副秘書長は、中国では中央政府と地方政府が、ソフトウェア産業と情報サービス産業の発展のために、研究開発や人材育成、国際協力など、さまざまな面で優遇措置を取っていると紹介し、こうしたことを背景に「中国企業のソフトウェアやDXについてのニーズは持続的に高まっている」と訴えた。
中国でのソフトウェアの位置付けについては「ソフトウェアが成長のエンジンとなり、全てを定義する時代になっている」とし、各方面で重要性が高まっていると強調した。その上で「社会のスマート化とデジタル化のニーズにより、中国のソフトウェア業界はさらに発展していくだろう」と語った。
中国のソフトウェア業界が抱える課題としては、▽ローカライズされた基盤ソフトと工業用ソフトの供給が不足している▽製品の付加価値が低い▽政府と企業の購買活動ではハードウェアが重視されており、ソフトウェアが軽視されている▽産業の急速な発展に対して専門人材の供給が相対的に遅れている―の四つを挙げ、産業構造が似ている日本の製品やサービス、ソリューションの中国市場での展開を期待した。
ソフトウェア市場の動向については「中央政府にしても、地方政府にしても、世界から先端技術を受け入れるつもりで、グローバルマーケットとの一体化はソフトウェア業界においても自然な流れだ」との考えを示した。ただ、中国の市場では、既にグローバルベンダーや中国の大手ベンダーがしのぎを削っていることも説明し、「競争は恐れるのではなく、歓迎しなければならない」と話した。
中国で規制されている「ChatGPT」については「現時点では、米中の対立によって使いにくい状況はあるが、緩和されていく傾向で、そのうち使えるようになるのではないか」と予想。先進的な技術を産業のイノベーションに使うことに対して中国は積極的姿勢とし、「中国は、世界中の国や会社に敵意を持っていない」と理解を求めた。
CSIAは1984年9月6日に設立。中国民政部に登録されているソフトウェア産業の業界組織。中国のソフトウェアと情報サービスの両業界のトップ100企業のほとんどが会員になっており、会員にはソフトウェアに関する研究機関や大学なども含まれている。(齋藤秀平)