日本IBM、京都大学大学院医学研究科、京大発医療ベンチャーのRADDAR-J for Societyは2月20日、3者が共同開発した難病照会AIアプリケーションを公開した。アプリケーションを通じて難病患者の早期発見を支援する方針で、一般向けの「Rare Disease-Finder」と、医師・研究者向けの「Rare Disease-Finder Pro」を用意している。
Rare Disease-Finderは、患者や家族など一般の人でも、難病の情報をWeb上で無料で照会することができる。医療分野の専門用語を知らなくても、症状を簡単な日本語で入力することで、罹患している可能性がある難病の候補を抽出し、その疾患の概要などの情報を閲覧できる。
患者数の少ない難病は専門医の数が限られるため、患者は自身の病名すら知らないまま長期間苦しみ、診察の機会も得られないことが課題となっている。Rare Disease-Finderでは、疾患候補の情報をもとに専門医を探すことも可能で、早期の診断や治療開始が期待できるとした。
医師向けのPro版は、一般向けとは異なり、医師自らが疾患を絞り込むことができるようになっているうえ、より詳細な疾患の情報を閲覧できる。また、疾患を検索する際に関連症状を細かく検討できるほか、症状と疾患の関連度をヒートマップとして可視化することも可能。医療機関の電子カルテ情報を適用することで、これまでに蓄積された診療情報から難病の可能性のある患者をリストアップし、専門医による治療の機会を創出するなどの活用例が考えられるという。
どちらのアプリケーションも、公開された査読付き学術論文など一定の検証を経た情報を照会しているため、信頼性が高いのも特徴だ。
日本IBM
山口明夫
社長
今後3者は、専門医と連携した難病研究の促進や、製薬会社との協業による新規の医薬品開発などにつなげていく。また、IBMの「watsonx」を活用し、難病に特化した大規模言語モデルの開発を行う計画。日本IBMの山口明夫社長は「テクノロジーを活用して、医療のさらなる進化、発展に役立つため、これからも取り組んでいきたい。将来的を見据え、量子コンピューティングと医療を組み合わせた取り組みにも挑戦していく」と意気込んだ。(大向琴音)