富士フイルムビジネスイノベーション（富士フイルムBI）は、AI分野でアマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン（AWSジャパン）と協業すると5月15日に発表した。富士フイルムBIがAIを活用したソリューションを開発するための▽AI開発プラットフォームの構築▽高度AI人材の育成▽海外展開ーの三つの分野でAWSジャパンと協業を進めていく。富士フイルムBIは、中堅・中小企業ユーザーが使いやすいAIソリューションの開発を重視しており、まずは自社の開発環境の整備と人材育成に取り組むことでAI活用ビジネスを伸ばす考えだ。
（安藤章司）
 
　AI開発プラットフォームの構築では、「Amazon Web Services（AWS）」が持つ各種AIエンジンへのAPIや開発ツール、テナント管理、認証課金、監視ログ収集など共通コンポーネントを活用することで「AIソリューションの開発生産性を大幅に高めることができる」（富士フイルムBIの鍋田敏之・取締役常務執行役員CTO）と、AI関連の開発環境をAWSに統一することで効率的な開発を目指す。

　富士フイルムホールディングス（富士フイルムHD）グループではレントゲンやCT画像など医用画像の分析を専門とする医療AI「REiLI」を開発しており、「グループが持つ独自のAI技術とAWSをはじめとする他社協業で得た技術を組み合わせるオープン＆クローズ戦略を推進していく」（鍋田常務CTO）と話す。

　高度AI人材の育成では、客先での実装を担うSE、AIソリューションの企画・開発の担当者を対象に基礎から高度な専門知識まで学べる体系的なカリキュラムを用意。AWSの最新技術を活用した実践的な開発力を身につける「AI道場」、さらには客先での実践を担うAIスペシャリスト「AIマエストロ」の認定制度を整える。全国の中堅・中小企業ユーザーとの顧客接点部分を担う国内販売会社の富士フイルムビジネスイノベーションジャパン（富士フイルムBIジャパン）のメンバーにも積極的に参加してもらう。

　AWSジャパンはAI開発プラットフォーム構築の技術支援や、高度AI人材の育成の一部カリキュラムの開発で伴走型のプロフェッショナルサービスを提供する。堤浩幸・常務執行役員エンタープライズ事業統括本部事業統括本部長は、「（富士フイルムBIのAI開発に）ここまで深く踏み込むのは今回が初めて」と話す。

　富士フイルムBIでは、AIの専門人材の確保が難しい中堅・中小企業ユーザーが、先進的なAI活用から取り残される「AIデバイド」を問題視している。ユーザー企業が持つさまざまな非構造化データをAIが学習できるよう整備し、業務に役立つAI開発を目指す。鍋田常務CTOは「社内の非構造化データが学習できなければ、『誰でも知ってる』一般的な回答しか出てこずに業務には役立たない」とし、オフィス向け複合機で培った文書処理の強みを生かしたAI学習の環境整備を支援する。

　将来的にはAWS Marketplaceを活用したAIソリューションの海外展開も視野に入れる。ITソリューション事業に相当する富士フイルムHDのビジネスソリューション事業セグメントの2025年3月期売上高は3300億円だったが、AI活用ビジネスを推し進めることで30年には複合機関連事業を含めた国内外ITソリューション全体で7000億円の売り上げを目標に据える。