さくらインターネットは8月26日、生成AI向けGPUクラウドサービス「高火力」シリーズに関する説明会を開き、霜田純・執行役員は再販パートナー制度の設立を発表した。すでに複数企業との再販契約を結んでおり、順次拡大する方針。同社は7月末、2026年3月期の業績予想で高火力シリーズを含むGPUインフラストラクチャーサービスの売り上げ予想を158億円から85億円に下方修正している。霜田執行役員は「需要があることは確認しており、しっかりアプローチして当期、来期ともに数字を出して応えていきたい」とし、間接販売による販路拡大のほか、学習、推論双方でのサービス多様化などに取り組み、成長を目指す。
(下澤 悠)
霜田 純 執行役員
下方修正は継続を見込んでいた生成AI向けの大型案件終了の影響を受けたとしている。説明会では、下方修正を受けた課題感や、競争の激化によってGPUクラウドサービスの事業環境そのものが悪化しているのではとの質問も寄せられたが、同社側は「未公表の情報も含まれている」として回答を避けた。サービスの今後について霜田執行役員は「ラインアップを増やすことで、お客様の幅広い需要にアプローチできる。(成長への巻き返しに)ポジティブに働くと考えている」と答えた。生成AI市場に関しては、推論のニーズが想定よりも早く拡大していると指摘。背景には開発した生成AIをマネタイズできる市場が形成されつつあるとの見方を示し「推論のニーズが増えることで、学習開発をしたいお客様の意欲が刺激される」(霜田執行役員)ため、需要拡大が見込めるとした。
現状を踏まえ同社は、学習向けに自社製のクラウド型スパコン「さくらONE」とGPUを組み合わせた開発基盤を展開し、大口案件の獲得やGPU資源の稼働率向上を目指す。推論向けには、大規模言語モデルをAPI接続したアプリケーションを国内完結で実行できるフルマネージドサービス「さくらの生成AIプラットフォーム」を投入。国産クラウドとしての信頼性や充実したサポートを売りに、顧客を開拓する構えだ。
販売面では、パートナー経由による新たな業界・顧客層への訴求を強化する。このほか、AI事業に関する機能を一つの部門に集約し、戦略、企画、開発、営業が一気通貫に連携する「AI事業推進室」を新設した。これまでは別々に動いていた組織を一体化することで、顧客の声にスピーディーに応じられる体制づくりを図った。
説明会には、自動運転の技術開発を手掛けるティアフォーの大里章人氏が登壇して導入事例を紹介。同社はベアメタル型の「高火力PHY」、VM型の「高火力VRT」を採用し、契約開始後1日で立ち上げができ、すぐに利用が始められた点などを評価した。