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PE-BANK、ウェビナー「ITエンジニアのための量子コンピュータの基礎と現在地」を開催

2025/08/28 15:58

 ITエンジニアの新しい働き方を提案するPE-BANKは7月23日、ITフリーランスのためのオンラインセミナー(ウェビナー)「ITエンジニアのための量子コンピュータの基礎と現在地」を開催した。

 今回の講師は、法政大学情報科学部教授の川畑史郎氏。川畑氏は量子コンピューターの黎明期の1999年頃から、量子コンピューターの最前線で研究開発を行ってきた理論物理学者。文科省、内閣府、経産省が主導する複数の量子コンピューター国家プロジェクトで、プログラムディレクタやアドバイザーとして活動している。

 川畑氏は、現在の量子コンピューターを「NISQ」と「FTQC」という二つの段階に分けて説明。NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum device)は、数十から数千の量子ビットを搭載するものの、エラーが多く大規模計算には不向きである。一方のFTQC(Fault-Tolerant Quantum Computer)は、量子エラー訂正を活用して長時間かつ大規模な計算を安定的に実行できる完成形である。現状、多くの研究機はまだNISQの段階にあり、FTQCの実現こそが社会実装のカギになると強調した。

 量子コンピューターの最大の課題は、環境からのノイズによる計算ミスの多発で、この誤りを克服するために不可欠なのが量子エラー訂正技術。川畑氏は、古典コンピューターのパリティチェックを例に挙げ、「一つの論理量子ビットをつくるために、多数の物理量子ビットを束ねて誤りを検出・修正する仕組み」であると説明。これによって、長時間にわたる安定計算が可能になると述べた。

 23年から24年にかけては、量子エラー訂正技術に関する大きな進歩が相次いだ。とくに注目を集めたのが、米スタートアップ企業 キュエラ・コンピューティング(QuEra)の成果。同社が発表した48論理量子ビットの原子量子コンピューターは世界の研究者・技術者だけでなくベンチャー投資家などに衝撃を与え、川畑氏も「QuEraショック」と呼んで業界全体のモチベーションを一気に高めたと振り返る。さらに、Googleも実験で量子エラー訂正を用いて超伝導量子コンピューターのエラー率を劇的に下げることに成功した。世界ではじめて量子エラー訂正による論理量子ビットを実現した。

 ハードウェア開発では、複数の方式が覇権を争っている。IBMやGoogleが推進する超伝導方式は半導体技術との親和性が強みである。IonQやQuantinuumが手がけるイオントラップ方式は安定性が高く、エラー率の低さで注目されている。「どの方式が最終的に勝つかはまだわからないが、エラー率の改善とスケーラビリティーが決定打になる」と川畑氏。各社の目標は、30年までに論理量子ビットを数百から数千規模で安定稼働させることにあると述べた。
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外部リンク

PE-BANK=https://pe-bank.co.jp/