矢野経済研究所は9月9日、防災DX市場に関する調査の結果を発表した。調査期間は2025年の5月から7月までで、防災DX関連事業者などへの直接面談や電話、メールなどによるヒアリング調査、文献調査を併用して調査を実施。24年の防災情報システム市場は事業者の売上高ベースで184億円と推計した。
防災情報システムとは、災害関連データをデジタルで収集・統合・分析し、ユーザに対して適時・適切な情報と行動指針を提供するソフトウェアおよびアプリケーションと定義している。従来、防災関連投資の多くはインフラ復旧や食品、日用品の備蓄といったハード面の整備が中心だったが、近年は気候変動リスクの顕在化を受け、平常時からリスクを可視化し異常時に即時通知できる仕組みの整備が進んでおり、情報システムやソフトウェア分野への投資拡大につながっているという。25年の防災情報システム市場は前年比1.6%増の186億9000万円を見込んでおり、今後も微増で推移していく見通しとした。
国内の防災情報システム市場規模推移・予測
また、現在防災DXにおいて、“フェーズフリー”が注目を集めていると指摘する。平常時と災害対応の非常時のそれぞれのフェーズをシームレスにつなぐことであり、防災ソリューションを提供する事業者は平常時でも利用できる機能を用意し、平常時と非常時で共通のシステムを継続的に活用できる設計を重視し始めているという。防災ソリューションは平常時に利用する頻度が少なく、投資対効果が見えにくいことから、導入が先送りにされるケースがある。日常業務である備蓄品管理や防災訓練の参集管理、インフラ点検などと連携し、平常時から活用する事例が増えている。
今後は、AIやIoT、デジタルツイン、ドローンといった技術の高度化や、データ連携基盤を活用した情報処理の実装が進み、複数の災害種別に対応できる包括的なサービスの提供が拡大していくとの見通しだ。(大向琴音)