調査会社の英CONTEXT(コンテクスト)は、世界のIT市場を分析する同社レポートの中で、トランプ関税の影響が懸念されるインドの経済情勢についての最新情報を発表した。
インドの対米輸出額は870億ドルで、450億ドルの貿易黒字状態だ。米トランプ政権は8月末、インドの複数の分野の製品について最大50%の関税措置を発動。コンテクストのレポートによると、トランプ関税の影響で、輸出額のうち350億ドルを失うリスクを抱えているという。中でも輸出全体のうち380億ドルを占める電子機器関連は、今後数年間で2~300億ドルの売り上げを失う可能性がある。特に、210億ドルに上るスマートフォンへの打撃が大きい。
このほかの産業では、100億ドルある繊維製品も、ベトナム、バングラデシュ、インドネシアなどに市場を奪われる可能性がある。またインドは、世界のダイヤモンドのカット・研磨で9割を占めており、宝石・宝飾品の対米輸出は100億ドルに上るが、今後、輸出減少のリスクが高いとして、解雇者数が10万人規模に上っている。
こうした状況を受けてインド政府は、英国との包括的経済貿易協定を締結した。2030年までに両国間の貿易額を560億ドルから1000億ドルへ拡大する。関税施策では、英国側ではインド製品の99%で関税を撤廃。インドでも英国製品に対する平均関税を15%から3%に引き下げる。インド政府では、こうした貿易協定を今後、西アジア・アフリカを含む50カ国と締結する計画だ。
さらに、115億ドルの雇用連動型奨励制度も展開。今後2年間、製造業で3500万人の雇用創出を狙う。さらに、116億ドルで研究開発・イノベーション制度も実施。低金利、あるいは無利子融資で、投資・雇用創出を促進する。インド商工省では、年間1000億ドルのFDI(Foreign Direct Investment=外国直接投資)をサービス、ソフトウェア、ハードウェア、通信、不動産、自動車、化学、製薬を対象に計画している。(道越一郎)